SDVは、「動く部屋」へ

2025年12月10日





読者の皆さまこんにちは。編集担当の小林です。

SDV(Software Defined Vehicle)は日本語に訳すと「ソフトウェアに定義された車両」という意味になり、ソフトウェアを用いて、自動車の機能を追加したり更新したりすることを前提に設計・開発される車両のことです。スマートフォンにたとえられて機能やビジネスモデルが解説されることもよくあります。まさに、スマートフォンのように、クルマの機能をアプリさながらにダウンロードしたり、削除したり、アップデートできるクルマのことを指しています。

とはいえ、現状ではとてもざっくりと「電子化されていて、外からカーナビなどのソフトをアップデートできるクルマ」という意味で語られていることがよくあります。とりわけ一般の人たちは、SDVと言う存在に、いまいちピンと来ていない方が多く、ほぼEVのことだと思っている方も少なくなさそうです。まだ概念としては新しいですし、EVの概念を超えるような仕組みは実際にまだない状態なので、仕方がないことですね。

SDVにおける当面の現実的な課題は、既に一之瀬隼人さんがいろいろ説明してくださっています。今回は、このSDVが普及した未来に、市場や私たちの生活に、どういった変化が起こり得るのか、妄想……、いえ、思いをはせてみたいと思います。

SDVは、クルマとは言えない存在へ

SDVの未来について、識者や関係者の方にお話をお伺いした時に、未来のお話が出ることがよくあります。その中でよく聞かれるのが、「未来は既に、クルマとはいえないものになっているのでは」ということです。

まず動力が電子化されていれば、構造的にかさばる内燃機関がなくなります。これは現状の電気自動車の構造から想像がつくことだと思います。さらに完全自動化して人が運転に介在しなくても安全性が確保されれば、運転席がなくなります。そうなってくると、クルマと言うよりは、もう「動く部屋」のようになってきますよね。SDVは、よく「4輪が付いたコンピュータ」という言われ方もするのですが、私はこっちの方がどうもしっくりきます。将来は、今のようなタイヤもなくなる可能性だってあるからです。

そして、この「動く部屋」というハードをどう使って人々のお役に立ち、ビジネスにしていこうかということになります。

私たちはマンションやアパート、あるいは一軒家を借りて済むことがよくあります。最近は、家具付きの部屋を月決めでサブスクリプション契約できるサービスもあります。それに、最近は、都内で賃貸料のが高騰してきている背景から、狭い物件に住むのが流行っているそうです。私自身、結構狭い空間が好きなのですが、いまや「大きなお家が最高」という人ばかりではないのだと思うのです。

いろいろ考えると、「動く部屋」を借りて、そこに住むニーズも出てきそうです。登記はどうなるのか、交通ルールはどうなるのか、気になるところですが、とりあえずそこはクリアしているものとしましょう。

「動く部屋」の内装は、プロジェクションマッピングのように自由に変えられ、生活に必要な家具なども好きに入れ替えができます。空調も自動で管理されます。

そして「家族が増えたら、がちゃっと部屋を足す」「成人を迎えた子どもなら、動く部屋を独立して与える」ということもできそうです。住む目的ではなく、ストレージ(倉庫)サービスとしての運用もできそうです。荷物を出したくなったときだけ、それを呼ぶのです。

さらに通勤先が小さな会社だったとして、そこも「動く部屋」だったとしたら、My「動く部屋」で通勤先へ向かうのです。もし会社が、なにか仕事の都合で場所を動かなくてはいけなくなったら、会社ごと移動します。

さて、このような社会では、良いことばかりではなく、問題も発生しそうです。例えば、動く部屋が普及すると、人は歩かなくなるかもしれません。そうすると、ロコモティブシンドロームなど運動障害が社会問題になったり、生活習慣病の人が増えてしまったりという問題が出るかもしれません。

インターネットと電気で成り立つ、この動く部屋の町ですが、電気が止まったり、インターネットが停止してしまった場合はどうなるのでしょう。もしも町を滅ぼしたい、戦争を起こしたいという輩がいる場合は、何とかしてシステムの中枢を攻撃することになるのでしょう。このころには、セキュリティーの技術が高度化され、通信の技術も今よりも発信機があちこちにあったり、もしくは今とは全く違う方式になっていたりということもあり得るかもしれません。

20年という時間の中で「動く部屋」は?

2005年ごろ、小さなメーカーで携帯端末開発のお手伝いをしていたことがあります。当時はやっていたPDAを見ながら、「携帯電話も、ボタンとかなくなって、画面だけになって、タッチすればいいだけになれば素敵だよね」と思って、Illustratorでレンダ図を描いて妄想していました。それから2年ぐらいして「iPhone」が出てきた時は、自分が描いた絵のとおりすぎて、本当にびっくりしました。

実は当時、イヤホンもワイヤレスになってほしいと思っていました。その時の上司が、有名なオーディオ機器の設計部隊にいた人でした。ワイヤレスイヤホンについては、このようにお話ししていました。「私もあるといいなと思うけど、ワイヤレスって、結構難しいのよ。Bluetooth使うと電池すぐきれちゃうし、ノイズだっていっぱい入るし。当分先じゃないのかなぁって思う」と言っていました。この会話をして、もう20年たつわけですが、ワイヤレスイヤホンも、すっかり普通になりました。

クルマも、今から20年くらい経って、ある日ふと振り返った時には、このように 「動く部屋」がある生活が当たり前になっているのかもしれません。

そうだとすると、間違いなく、セキュリティーとネットワークは、投資しがいのある技術なのかもしれません。ものづくりについては、素材や化学の技術がより重要になってくるように私は思えます。

また、アナログな活動を見直す動きや、身体を使う活動に回帰する動きもあって、筋トレや体力づくりのようなサービスを使うのが当たり前になったり、インターネット普及以前の生活を楽しむサービスがでてくるなどもあり得るかもしれません。

会社の経営者さんが会社の持続性を考える時、そして今学生の方が、自分の専門を考える時、こういう自由な妄想をしながら、未来に何が必うようになってくるのだろうと考えていくと、もしかして将来、大成功できる可能性があるのかもしれません。