国内外のSDV開発、今後はどうなる?:自動車業界よもやま話

2025年09月17日

コラム



コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。  

前回までに、自動車業界で急速に進められているSDVの概要や、それが登場することによる世の中や業界の変化、開発の課題について紹介しました。今回は、SDVに対する国内外の動向と今後の展望を紹介します。 

日本政府のSDVに対する取り組み 


国内では、経済産業省と国土交通省が「モビリティDX戦略」を2024年に公開し、2025年にアップデートしました。官民連携による取り組みを進めるべき3つの協調領域の1つとして、SDV領域を特定しています。SDV領域における具体的な取り組みとしては、「高性能半導体の研究開発」や「開発効率化のためのシミュレーション環境の構築」などが挙げられました。2025年のアップデートでは、「官民協調体制下でのSDV関連投資の加速化」や「SDV開発に適した産業構造の構築」がポイントとなっています。例えば、「SDV関連部品等のグローバルサプライチェーンの把握や強靭化に向けたデータ連携」、「SDV化に対応した車両の要件定義の共通ルール化」、「開発プロセスのデジタル化」などが主な取り組みです。 

国内自動車メーカーによるSDVに対する取り組み 

Arene が搭載された「RAV4」  出所:ウーブン・バイ・トヨタ (プレスリリース

国内大手自動車メーカーの取り組みについて、トヨタ自動車はウーブン・バイ・トヨタが開発したモビリティ向けの新しいソフトウェアプラットフォームである「Arene」が採用された新型RAV4のワールドプレミアを行いました。Areneは主に、ソフトウェア開発キットである「Arene SDK」、ソフトウェアを検証する「Arene Tools」、データ収集基盤である「Arene Data」で構成され、これらを活用することで高品質なソフトウェアの開発を加速させることが可能です。また、トヨタ自動車以外の自動車メーカーも、メーカー間の垣根を超えたソフトウェア開発領域における連携を模索しており、今後も取り組みは拡大していくでしょう。 

海外におけるSDVへの取り組み 

メルセデスのSDV「GLC」(欧州向け仕様車)にMB.OSが搭載。

インテリアをユーザー好みにカスタマイズできる。

出所:Mercedes-Benz(プレスリリース

海外では、メルセデスが自社OSである「MB.OS(Mercedes-Benz Operating System)」を開発し段階的に導入を開始しています。また、ステランティスは「STLA Brain」などを核にSDVを推進しており、2025年には量産投入を予定しています。中国地場メーカーであるBYDやNIOも、それぞれSDVに向けたソフトウェアプラットフォームとシステムを開発しており、この流れは今後加速していくでしょう。

一方で、NVIDIAは、非自動車メーカーでありながら、車載中央コンピューティングの基盤として「NVIDIA DRIVE Thor」を開発。既に多くの自動車メーカー・モビリティ企業に採用されています。自社単独での開発を行っていない企業だけでなく、独自システムを構築している企業とも連携した開発を行っているため、メーカー独自OS以外ではNVIDIAのシステムがデファクトスタンダードになっていくのかもしれません。 

 

SDVの今後の動向 

2025年は、多くの自動車メーカーがSDVによる開発車両を市場に投入し始める段階です。今後の競争を生き抜くためには、「いかに多くの車両を共通プラットフォームで開発し、共通のソフトウェアを搭載できるか」、また「搭載したソフトウェアを短いサイクルで改善し、OTAでアップデートし続けられるか」という、“物量と速度の競争”になっていくのではないでしょうか。

そのためには、共通で適用できるハードウェアの構築やソフトウェア開発期間の大幅な短縮。また、これらを収益につなげる仕組みの構築が必要不可欠です。一方で、SDVやOTAに関しては、法規制が十分に整っていないことも重要な課題です。関係機関とも連携を取りながら、法規制が整備された際にやり直しにならないようなプロセスに則った取り組みも必要不可欠です。 

 

実際にソフトウェア開発に関わる立場としても、ソフトウェアの開発環境やソフトウェアの共通部分が増えていくことで開発の効率化につながるため、SDVに取り組むメリットは大きいです。一方で、共通で適用できるようなロバストな制御の開発が必要です。バグが混入した場合のリスク・影響範囲が拡大することを十分に理解し、高い品質のソフトウェア開発体制を構築することが、より一層重要になると感じています。また、共通ソフトウェアによって駆動させるハードウェア、アクチュエータなども広範囲の車両に適用できる高性能な製品を構築する必要があり、コストと性能の両立は大きな課題となります。 

プロフィール



⁠⁠一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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