グミをつくるおもちゃのはなし① :メーカー生産技術だったママのよもやま話

2026年08月26日

コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。今回はクッキングトイ開発のお話です。 

子どもが遊びとしてお菓子や料理をつくるおもちゃ。それがクッキングトイです。昔から人気のあるジャンルで、今もさまざまな製品が発売されています。ただ、作れるお菓子や料理の幅というのは、実はあまり多くはありません。やはり子どもが遊ぶ以上、複雑な工程や、火を使うなどの危険な工程は避けたいというのがメーカーの本音。 

おもちゃというより家電としてであれば、ポップコーンメーカーや綿あめ、ワッフルメーカー、かき氷などがいろいろなものがありますが、玩具メーカーが販売するものはチョコレート菓子(溶かして固めるだけ)、ゼリー、クッキーなど、どの家庭にもある電子レンジなどと併用するものが多いです。そうでなくてはおもちゃとして販売することができないためです。 

今回は当時大人気のかわいいキャラクターがたくさん出てくるアニメとのタイアップ製品。グミを作るクッキングトイです。グミを作る製品であれば、過去に私も経験があります。今回はすんなり開発が進むでしょうか? 

いつでも問題になるのは金型費用 

私はプラスチック製おもちゃメーカーでしたので、製品開発の際には必ず金型を作ります。プラスチック射出成形用の金型というのは、すごく高額です。1型であっという間に数百万しますし、1型だけで完結する製品は多くありません。通常は何型も製造する必要があります。 

プラスチックメーカーをしていると、たまに一般の方から、「こういう製品を作りたい」というお話を頂くことがあります。そこで「金型にこれくらい費用がかかります」とお話をすると、すごく驚かれます。何万個と製品が売れなくては金型費用を回収することはできません(そしてたいていそれがネックとなり話が流れます)。

「プラスチックなんだから、簡単にたくさん作れるだろう」と思われているようで、そういう時にプラスチック成形に対する世間のイメージとギャップを感じます。 

話しは戻りますが、製品開発時にできるだけ金型費用を抑えられないかとあれこれプランを考えます。型数を減らし、金型を小さいものにする。これが真っ先に考えられる案です。つまり部品点数を少なくして、製品サイズをあまり大きくしないこと。 

ちなみに金型費用だけでなく、成形時のことを考えても金型数と金型サイズは抑えたいところです。型数が増えればそれだけ成形機を動かす回数が増えるので費用も納期も伸びます。金型サイズが大きくなると、射出成形機のサイズも変わりますが、大きな機械はそれだけマシンチャージ(機械を動かすのにかかる工賃)が上がります。 

また話が脱線しますが、例えば園芸用のプランターやお料理に使う保存容器など同じ形状でさまざまなサイズ展開のある製品では、ある一定のサイズから突然大幅に値段が上がっていると気付くことはありませんか?形状や色は同じで、サイズがほんの少し大きくなっただけなのに、いきなり倍の値段になったりする。腑に落ちない。そんな経験はありませんでしょうか。 

プラスチック成形メーカーなら、「ああ、ここで成形機のサイズが変わるんだな」と気付きます。それくらい金型のサイズは値段に直結するのです。 

プラスチック成形は、射出成形だけじゃない! 

とは言え、製品仕様があるので、勝手に製品サイズを小さくするわけにはいきません。今回の製品の場合、懸念になったのはキャラクターの形をつくるためのグミ型のサイズでした。作れるグミ1つの大きさは親指サイズくらいで大きくはありません。 

しかし製品仕様では、直径15センチくらいの円形のプレートに、いくつものキャラクターが3D形状で彫り込まれており、そこにグミ液を流し込んで固めるというもの。その円形プレートを4枚付属したい、というのが顧客要求でした。 

4枚? 

15センチの円形の成形品を? 

4枚?? 

………4枚ですか!!!??? 

待って、金型何個必要???  

私たちはさまざまな検討を重ねました。例えば、プレートの型自体は1つで、キャラクター部分をコマ加工にして、成形ごとに取り換える。成形部からそんなのいちいちやっていられないと苦情が来ました。ですよね。 

参考までに買い集めたキャラクターグミを食べながら、あることに気付きました。現在スーパーやコンビニで売られているキャラクターのグミは、ブリスターパックに直接グミ液を流し込まれたものが多い。プレート型は射出成形じゃなくてもいいのでは? 

ブリスターパックは射出成形とは異なり、真空成形という成形方法で作られています。真空成形とは、熱したシートを金型に押し当て、空気をびゅっと吸い出して金型に密着させることで金型の形状を写し取る成形方法です。射出成形に比べて低価格です。 

これだ!! 

私たちはさっそく、グミ型を真空成形で作るべく、検証をすすめていくことになりました。思いつく限りでも心配なことはたくさんあります!果たしてうまくいくでしょうか? 

次回に続きます! 

プロフィール



⁠おりも みか
 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
⁠TwitterID;@jilljean0506