
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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カレーに屈した私たち――バイオプラドタバタ劇場【成形色編その4】
2025年12月03日
コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。
前回までに、お米のバイオマスプラスチックを使った積み木の開発で、いろいろと大変だったことを取り上げてきました。
苦労の甲斐あって、お米を使ったバイオプラスチックの積み木の売り上げが好調だったので、新製品のお話がきました。それは「食器」です。
おもちゃじゃなくて、食器ですか?
最近ではバイオプラスチックの製品が多く販売されていますが、特に多いのが食器だと思います。ファストフード店などでもらえる使い捨てのものもありますが、100円ショップなどで売られている食器にも、竹やトウモロコシなどのバイオ材料が使われているものをよく見かけます。

実際の店舗でのバイオプラ採用事例:
紙製のエコなテイクアウト容器や竹製のスプーン&フォーク
出所:プロントコーポレーション ※本コラムの事例とは関係ありません。
正直なところ、プラ製品を作る側の立場にいた私にはあまりピンとこないのですが、消費者の方にとって食品や天然成分を原料としていると「安心」というイメージがあるようで、バイオプラ黎明期でもよく見かけたのが食器でした。食器ですとあまり強度を必要とされないため、プラスチック100%よりも強度が劣るバイオプラで使用しやすいというメーカー側の都合もあったのかもしれません。
私が働いていたのはおもちゃメーカーですが、クッキングトイ(お菓子や料理を作るためのおもちゃ)の開発経験もあるため、全くの門外漢という訳ではありません。また、食器の品質基準は食品衛生法に規定されているのですが、おもちゃの中でも赤ちゃん向け玩具は同様に食品衛生法の基準に適合している必要があるため、品質面でも問題はありません。
この時、品質担当になったのは、長く品質保証部経験のある先輩。私は生産技術担当となり、安心の布陣です。さぁ、はりきって参りましょう!
カレーとミートソースという罠
食器の品質基準書は、おもちゃとはやはり少し違います。今回はおもちゃではないので、ST基準も関係ありません。参考のために購入した海外メーカーのバイオプラスチック製食器と比較しながら、品質基準を詰めていきました。
ところで、試験と検査の違いを皆さまご存じでしょうか? 試験というのは、その製品の特性や性能を確認するもの。検査というのはある基準に適合しているかどうかの可否を決めるものです。開発段階における品質の検証は「試験」なので、結果自体に可否はなく、その試験結果を踏まえてどうするかが重要なわけです。 試験で可否は決まらないものの、ここに文言が付くとなんだか落ちつかない気分になってしまうのは、試験に悩まされ続けた学歴社会の日本人あるあるなのでしょうか。
開発段階ではいくつもの試験をします。強度試験や温度試験など、種類はさまざまです。食器ですので、食品と付着させた状態での温度試験を行いました。品質基準でよく行われる温度試験は、高温試験、低温試験、そしてサイクル試験です。 サイクル試験とは、高温と低温を何サイクルか繰り返すことで製品にストレスを与え、製品が劣化した状態で強度などに変化が起きるかどうかを試験するものです。加速劣化試験とも呼ばれます。

今回は食器に、カレーとミートソースを付着させて試験をしたところ、食器にカレーとミートソースの色がしっかりと移ってしまったのです。 そのためサイクル試験の結果は「差異アリ(着色)」となりました。
けどまあ、落ち着いて考えてみましょう。
残り物のカレーを入れておいたタッパーウェアに黄色い色がうつってしまった経験、誰にでもあるでしょう。お弁当に入れたスパゲッティの赤い跡が、お弁当箱のふたについてしまって取れなくなったこともありますよね。この試験、結果はそれほど問題ない……と私個人は思っていたのですが、比較していた海外製の食器にはほとんど色移りがありませんでした。 そこで困ってしまった品質担当と営業担当。これは材料の問題なのか、それとも成形の問題なのか、袋小路に迷い込んでしまった開発担当者たちは、思い切った作戦を取りました。
色移りするなら濃い色にしちゃえばいいじゃない (あきらめた)

※現物ではなく、AIによるイメージです
カレーの色残りは黄色、ミートソースはトマト成分が色残りするため赤く残ります。そこで食器の色が、黄色と朱色に決まりました。しかもかなり濃い。決して色移りを悟らせまいという強い意志を感じるカラーです。
はいっ?

白じゃないの!?
おもちゃの時にあんなに白にこだわってただろっ!!??
何でっ!?
(↓あの苦労は一体何だったの?)

そして正直なところ、本当に、本当に申し訳ないけれど……
かなりイケてない。はっきり言ってダサい!
私も思わず声を上げましたが、仕様がそのように決まったのであれば、私が口出しすることではありません。製品は無事、発売されました。 しかし……これだけ頑張った食器がリピート生産されることはありませんでした。 原因は定かではありませんが、やはり色がイマイチだったのではないかと、今でも私は思っています。
「バイオプラドタバタ劇場」は、次回も続きます! お楽しみに!
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