
一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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車載部品を軽量化・小型化するために使える技術:自動車業界よもやま話
2025年02月12日
コラム
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コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。
電動化による自動車の重量増加が引き起こすさまざまな影響があります(前々回)。しかし車載部品の軽量化・小型化は簡単ではないため、開発には時間がかかります。その一方で、開発期間の短縮や開発効率の向上は必須です。
今回は車載部品の軽量化や小型化に活用できる技術や考え方について、概要とメリットを紹介します。それぞれ、自社単独で実現するのは難しい場合もあるため、必要に応じて外部サービスの活用などを検討するケースもあります。
構造最適化シミュレーション
軽量化や小型化を実現するために背反となるのが、必要な強度の確保です。軽量化と強度の確保を両立するためには部品の構造を最適化する必要があります。しかし、無数にある形状の中から最適な構造を見つけ出すのは簡単ではありません。効率的に開発を行うためには、構造最適化を自動で行う構造最適化シミュレーションの活用が効果的です。
構造最適化は、主に3種類に分類できます。
- 寸法を設計変数とする寸法最適化
- 外形形状を設計変数とする形状最適化
- 位相を設計変数として最適化するトポロジー(位相)最適化
構造最適化シミュレーションではこれらの最適化を自動で行うことによって、軽量化や小型化と強度を両立した構造設計が実現できる可能性があります。
開発の初期段階で構造最適化シミュレーションを行うことで、設計変更のコストを低く抑えられます。また、他部品との干渉など設計制約が定まっていない状態であれば、自由度の高い設計が可能です。

図1 構造最適化の例:トポロジーの最適化技術の適用例(フロントダッシュサイド)(2019年1月9日JFEスチールのプレスリリースより)「トポロジー最適化技術は、“対象範囲から無駄な贅肉を効率的に削除する”、すなわち与えられた設計空間から要求される特性に必要な要素を残存させ、最も効率のよい材料の分布を求めることができる解析方法」。トポロジー最適化は人が発想できないような形状を生み出す。
マテリアルズインフォマティクス(MI)
軽量化を実現するための代表的なアプローチの1つは、軽く強度の高い材料を使用することです。しかし、材料にはさまざまな特性が求められるため、理想的な材料は存在せずに新たに開発が必要な場合があります。設計で求める特性を満たす材料の開発を効率的に行うためには、マテリアルズインフォマティクス(MI)が効果的です(図2)。
従来の材料開発は研究者の経験や知識に依存し、実験主体で行われてきたため、新たな材料の開発には時間がかかり、経験から外れた組み合わせは実現しにくい状況でした。MIを用いれば、バーチャルな環境の中で、自動で特性の検討や期待値の高い組み合わせの抽出が可能になるため、開発の効率化が期待できます。また、研究者の経験や知識に依存しない、全く新しい発想の材料の開発を実現できる可能性があります。
MIの考え方は材料開発だけでなく、複数の特性を最適化するパラメータ設計にも活用できるかもしれません。ただし、適用対象に関するデータベースが必要です。適用を検討する場合には、過去の開発情報や参考情報などをMIモデルで読み込める形で、データベースとしてまとめておくといいでしょう。

図2:マテリアルズインフォマティクスとは(MI-6社による解説、PlaBaseより)
Universal Specification
Describing Manner(USDM)
USDMは、上流工程からの要求仕様を抜けもれなく正確に定義するための手法です。ソフトウェア開発では一般的に用いられており、標準的な開発プロセスにUSDMを組み込んでいる企業は少なくありません。
車載部品の軽量化・小型化を目指す場合には、要求仕様を満たした上で設計を大きく変更しなければならないこともあるため、改めて要求仕様の分析と定義を実施し、それを関係者に誤解なく伝わる状態にしておく必要があります。USDMは主にソフトウェア開発で用いられている手法ですが、複数の部品で構成されるシステムや機電一体の製品設計にも適用できるでしょう。
USDMを用いることで、要求仕様を階層構造で整理し抜けもれなく管理できます。また、顧客や社内関係部署とUSDMで整理した要求仕様を共有することで、解釈のずれによる手戻りを抑制できます。さらに、要求と実際の仕様を紐づけておくことで、製品設計に要求が反映されていることを確認しやすくなるでしょう。
今回紹介した技術や考え方は、業界や企業によっては既に量産製品の開発に用いられている実績のあるものです。扱っている製品や解決したい課題に応じて、このような技術や考え方を適用できるといいでしょう。
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