
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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ちょっと待った! その食器、食洗機OKですか?:メーカー生産技術だったママのよもやま話
2025年05月28日
コラム
「メーカー生産技術だったママのよもやま話」、はじめます♪
製造業ライターのおりも みかです。前職ではプラスチック製玩具メーカーの生産技術や品質を担当しており、現在は小学生2人を育てるママライターです。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けいたします。
夫が食洗器で繰り広げる悲劇
子どもが小さいと大活躍のプラスチック製食器。軽いし、割れにくいし、かわいいデザインも多いので大助かりですよね。100円ショップなどでも気軽に購入できますし、安価なのも魅力です。我が家もたくさん持っています。
でもプラスチック製品の開発をしていた私からすると、「ちょっと待った!」と思うような使い方をされている方が多いのも事実です。
我が家では自動食器洗い機(食洗機)が毎日大活躍しています。高温で洗浄してくれる食洗機は、皿洗いの手間が減るだけでなく水の節約にもなるし、スッキリ洗える気がするので家事育児に忙しい親たちの味方ですよね。
夫は食洗機に全幅の信頼を置いているので、何でもかんでも食洗機に入れます。
そしてしばしばこういう悲劇が起こります。

歪んでいる……。と言うかもはや、ねじれている……。
そうです。食洗機の熱で、お弁当箱のふたが変形してしまったのです。
ふたは外そう
現在市販されている容器や食器は、プラスチックであれ陶器であれ、多くはレンジOKかどうか、直火OKかどうか、オーブンOKかどうかに加え、食洗機が使えるか否かなど、取り扱いに関する注意事項の記載がしてあります。
こうした保存用容器の場合、本体はレンジや食洗機が使用できても、「ふたは外してください」と記載されているものがあります。
上の写真の時は、お弁当箱のふたを外さずにそのまま食洗機に入れてしまったので、こうなってしまったわけです。こういう経験がある方も多いのではないでしょうか。
「買ったときのことなんて覚えていない」という方でも、日本製の容器や食器であれば裏側に刻印がしてあることが多いです。これは食品衛生法容器包装で定められているため。分からないときはぜひ裏側を見てみてください。

容器の裏側の刻印
これは先ほどの容器とは違うものですが、このように耐熱・耐冷温度が刻印されています。本体とふたはそれぞれ耐熱・耐冷温度が異なることが分かります。この容器のふたの耐熱温度は60度ですね。
一般に食洗機のお湯の温度は80度以上になると言われているので、耐熱温度をはるかに超え、変形してしまうというわけです。
この容器は本体も耐熱温度が70度なので、「電子レンジでは使用しないでください」と書いてありますね。ちなみにこちらの容器ですが、(おりも夫により食洗機に突っ込まれたことで)やはりふたは変形して閉まらなくなってしまっております……。
「プラスチックって、プラスチックのことじゃないの?」
ではなぜ、こんなことが起きてしまうのでしょうか。プラスチック製食器を使うときや購入するときに材料が何かを考えたことはあるでしょうか?
「え、プラスチックはプラスチックでしょ? 何を言ってるの?」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
分かります。分かります。でもプラスチックと一口に言っても、その種類は膨大。そして種類によって全く特性が違うのがプラスチックなのです。主なプラスチックの耐熱温度を表にしてみました。
一般に、容器や食器によく使用されるのはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)などです。
表:主なプラスチックの耐熱温度(※1)

これを見ると、プラスチックの材料によって耐熱温度は全く異なることが分かります。一般的によく使用されているものを汎用プラスチック、特性を強化したものをエンジニアリングプラスチックと呼び、用途によって使い分けます。
使用温度より熱変形温度が低いことがありますが、プラスチックはその形状などにもよって変形の仕方や度合いが変わってくるためです。そのためメーカーでは、必ず恒温槽という装置を使った温度試験を行い、耐熱温度を設定します。
私はメーカー時代、こうした温度試験を毎日のようにやっていました。高温環境に置くと、プラスチックというのは大なり小なり変形したり、ツヤ感が変わったりなどの変化を起こします。
使用にそれほど影響がなければ問題とはしませんが、ふたのように薄肉の平べったいものは変形して戻らなくなり、使用に支障をきたしてしまうことが発生します。そうならないためにメーカーは耐熱・耐冷温度を記載しているのです。
でも、なかなかこういう表記は見てもらえないのが実情です。「これはどんな材料でできているのかな? 温度は大丈夫?」とぜひ確認してみてください。
私も夫に何度も言っていますが、こうして悲劇は繰り返されています。
参考
※1)樹脂プラスチックの耐熱性データ一覧(樹脂プラスチック材料環境協会)より筆者抜粋
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