大阪・関西万博のスマートモビリティ関連トピックから見えた課題と今後:自動車業界よもやま話

2025年10月29日

コラム

コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。  

2025年4月13日(日)から2025年10月13日(月)までの184日間、大阪の夢洲(ゆめしま)で2025年日本国際博覧会。通称、大阪・関西万博が開催されました。⁠開幕から168日目の9月27日には来場者数が2500万人を達成したとの発表もあり、大変な盛況ぶりでした。

今回は、未来を感じさせる次世代技術や社会システムの実証を目指す大阪・関西万博のテーマの1つであった「スマートモビリティ」について紹介します。

スマートモビリティ万博の展示内容

大阪・関西万博では、さまざまな次世代モビリティが導入されました。例えば、カーボンニュートラル社会の実現を見据えたEVバスや水素燃料電池船。また、eVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ばれる「空飛ぶクルマ」も注目を集めた展示の1つです。

EVバスについては、単にEVバスを運行するだけではなく、自動運転レベル4の実現に向けた実証実験が行われました。また、一部の区間では走行中給電技術(DWPT:Dynamic Wireless Power Transfer)の導入が行われ、100台以上も運行されるEVバスの運行管理システム(FMS:Fleet Management System)やエネルギーマネジメントシステム(EMS:Energy Management System)を活用した運行・充電の最適化に向けた技術実証にも注目が集まりました。

EMSとFMSとDWPT

今回の万博で運行されたEVバス

自動運転レベル4の実現に加えて、今回の目玉はEMSとFMSとDWPTの連携ではないでしょうか?100台程度のEVバスに対して、FMSで運行計画の作成や管理・手配などを効率的に行い、EMSでDWPTを組み込んだ効率的な充電とコスト抑制を両立させます。

今回の大阪・関西万博で実証試験を行った後にシステムの改良・性能向上などを行い、2028年以降を目途に大阪市内公道での市内バス輸送実証実験を実施予定です。運行管理と充電コスト管理が適切に行えれば、従来よりも柔軟な移動を低コストで利用できるようになるでしょう。

一方で、DWPTは路面への機器埋設が必要なため、簡単に導入できません。一時期に比べて世界的なEVへの期待が落ち着いている状況の中、EV以外の車両への適用可否、導入箇所の検討は慎重に行う必要がありそうです。

空飛ぶクルマの商用利用拡大はいつか?

公式キャラのミャクミャクがデザインされたSKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)(出所:SkyDrive)

万博の開催期間中にはそれほど大きな注目は集めていなかったようにも感じるのですが、「空飛ぶクルマ」の機体展示やデモフライトが実施されました。

なお空飛ぶクルマについては、筆者が2022年に『「空飛ぶクルマ」に集まる期待と実現に向けた課題という記事を書いています。

当時の記事で参照した国土交通省による空の移動革命に向けたロードマップによると、2024年度には商用利用を開始し、2025年後半には2次交通や山岳地での荷物輸送に活用されていく計画でした。

しかし、2025年10月現在、日本国内で空飛ぶクルマの商業利用のニュースは聞いていません。2025年代後半に期待される商用利用の拡大も、メリットに対してコストなどの課題が大きく実現はまだまだ難しいという印象です。

今回の大阪・関西万博で空飛ぶクルマの認知度が高まり、需要が大きくなることで新たな技術開発の進展やニーズの拡大が期待されます。今後、どのように開発が進められ、商用利用に活用されていくのか注目です。

自動運転EVバスのインシデントと今後に向けて

今回の万博では、自動運転EVバスについて注目が集まりました。例えば、阪急バスが一部の車両に導入していた自動運転は6月上旬にシステムトラブルにより運行停止後、閉幕までトラブルが解消せずに再開することはありませんでした。

また、大阪メトロの自動運転バスは4月に壁に接触する事故、7月には縁石に接触する事故が発生し、時間をかけて原因調査が行われました。

現在は、自動運転システムの開発とEVバスの開発は別の企業が行い、自動運転EVバスとして結合するという開発形態が多い状況です。

インシデントが生じた場合には、①EVバス・②自動運転システム・③結合部のどこに課題があるのかを正確に分析することが重要です。

今後国内で自動運転EVバスが普及していくには、運行事業者の信頼性に大きな傷をつけてしまうインシデントを避けるために、実験結果の確認だけでは不十分です。しかし上述の①②③それぞれの観点で、網羅的な試験を行うことは不可能です。

そのため代表事例の実験結果を確認すると共に、①②③の全ての観点で設計的に安全性を説明しきれることを確認する必要があるでしょう。

万博によって、さまざまなスマートモビリティに注目が集まりました。期待通りの成果を出したもの、評判を落としてしまったものなど、状況はそれぞれです。重要なのは、万博での実証実験や利用者からの批評を元に、今後の普及に向けてどのように開発・社会実装を進めていくのかです。今後の動向に注目しましょう。

プロフィール



⁠⁠一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
⁠>>執筆者サイト