
一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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EVは普及拡大するのか――自動車駆動方式の行方:自動車業界よもやま話
2025年11月26日
コラム

コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。
今回は、自動車業界における大きなテーマの1つである駆動方式の変化について、現状把握と今後の動向について確認します。数年前までは、国・地域によって拡大ペースに差はあるものの、将来的には世界中で電気自動車(BEV)が大きく普及するという風潮でした。しかし、ここ2~3年でその風潮には大きな変化があり、地域ごとの差が大きくなっています。
地域ごとのEV販売の現状
IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)によると、2024年の全世界におけるEV(BEV,PHEV)の販売台数は欧米中を中心に1,700万台を超え、自動車販売台数全体のシェアは20%を超えました。2025年には年間販売台数2000万台を超え、販売台数のシェアは25%以上になる可能性が報告されています。ここからは、代表的な地域ごとの状況を確認します。
※EV販売の現状を示した本見出しにおいては、参考としたIEAの資料での記載に基づいてBEVおよびPHEVをEVとして表現しています。
中国
特にEVの普及が進んでいるのが中国です。2024年の販売台数1700万台のうち1100万台を中国が占めており、今後もその勢いは加速していく見込みです。背景にあるのはEV販売時のインセンティブとEV価格の低下です。私は中国に何度か訪れたことがありますが、先進的なデザインの車両だけでなくさまざまなEVが街中を走行しています。現地の友人が呼んでくれるタクシーもほとんどがEVだったことが強く印象に残っています。

中国で試乗したロボタクシー
欧州
中国には及ばないものの、欧州もEVの販売シェアが大きい地域です。一時期よりも補助金や政策支援は弱まっていますが、新車販売台数の20%程度がEVであり、2025年には25%程度に達する見込みです。一方で、合成燃料に対応した車両を認めるなど政策・規制面でのEV拡大支援は減少しており拡大ペースの上昇は遠くないうちに頭打ちになるかもしれません。

フォルクスワーゲンの電動ミニバン「ID. Buzz」:2025–2026日本カー・オブ・ザ・イヤー「10ベストカー」に選出(出所:フォルクスワーゲン)
北米
北米は中国・欧州に遅れはとっているものの、EVが10%程度の販売シェアを確保しています。北米は地域ごとに規制が大きく異なるためEVの普及も地域差が大きく、自動車業界で注目されているカリフォルニア州では大きく普及しているものの、それほど拡大していない地域もあるのが実情です。

テスラ「Model 3」(出所:テスラ)
日本
日本でもここ数年でEVの選択肢が増え、徐々に拡大している傾向にあります。しかし、欧米中には遠く及ばない状況です。EVの価格や特に国内メーカーにおける選択肢の少なさがネックになり、コストと燃費・デザイン・機能などの兼ね合いで日本国内ではHEV車が主流です。

トヨタ「bZ4X」(出所:トヨタ)
その他の地域
東アジア以外のアジアでは、インドでのEV普及が初期段階であり、配送向けなど商用車でのEVのみ先行しています。今後、政策面での拡大を目指している状況です。東南アジアは国別の差が大きく、タイ・インドネシア・ベトナムでは生産拠点化による普及を拡大していますが、フィリピン・マレーシアなどは遅れています。
南米については国によって違いは大きいものの、全体では2024年からEVの販売が大幅に増加しています。特に、税制優遇や輸入関税、補助金などの政策変化や中国系のEV車が流入していることで、普及が進んでいます。
アフリカは、全体としては普及が進んでいませんが、南アフリカやモロッコなどの一部の国でBEVやHEVなどの電動車が増加しています。

スズキは「e VITARA」とストロングハイブリッド車用電池の出荷をインドで開始(出所:スズキ)
欧州で規制緩和される合成燃料について
合成燃料とは、二酸化炭素と水素を人工的に合成した液体燃料を指しており、近年は欧州の自動車排出規制の中で合成燃料使用車両は例外扱いされるなど、注目を集めています。具体的には、合成燃料のみを使用し走行中に二酸化炭素を排出しても、燃料製造時に回収した二酸化炭素と相殺されるという考え方です。
今後の動向に対する注目ポイント
現状は拡大傾向が続いており今後数年は拡大が予測されているEVですが、その先の状況は不透明です。現在の拡大についても純粋に車両デザインや価格・機能のバランスで選ばれている状況ではなく、多くが政策面での支援や規制強化などが大きく関係しています。欧州が合成燃料を条件付きで許可したことで、BEVが必須という考え方ではなくなりました。
新車販売50%をEVが占めるような状況を実現するためには、全固体電池をはじめとした車両機能向上を実現する技術開発に加え、HEV車と同程度の価格帯に抑えられるような画期的な技術開発・生産体制の構築が必要不可欠だと感じます。現時点では具体的な見通しが見えていないため、私自身はBEVが席巻するような状況は訪れないと考えています。
参考文献
- Executive summary – Global EV Outlook 2025 – Analysis(IEA)
- Commission unveils the Sustainable Transport Investment Plan: a strategic approach to boost renewable and low-carbon fuels for aviation and waterborne transport(Mobility and Transport)
- New car registrations: +0.8% in 2024; battery-electric 13.6% market share - ACEA(European Automobile Manufacturers' Association)
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