PEやPSの基礎材料・エチレンの供給、これからどうなるの?

2026年03月18日

コラム

ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの汎用プラスチックの基礎原料である、エチレンの供給網が今、大きな転換期を迎えています。

直接エチレンを調達することはなくとも、その動向は「材料選定の安定性」「調達コスト」、そして「次世代製品の環境対応」に直結します。

なお2026年3月17日の報道(記事末リンク)では、赤沢経済産業大臣がナフサについて「国内需要の4カ月分を確保可能」との見通しを示しています。

足元の材料調達・供給網の構造変化

現在、PEやPVCなど汎用樹脂の供給体制は構造的な転換期にあります。日本のエチレンは輸入したナフサを熱分解して製造されますが、その輸入ナフサの約7割を中東地域に依存しています。

現在、イラン情勢などの軍事的緊張を背景に、ホルムズ海峡などの要衝における輸送リスクが顕在化しています。こうした地政学リスクは原油やナフサ価格の変動要因となるだけでなく、供給ルート自体の不確実性を高める要因とされています。

図面で指定した樹脂材料が将来的に納期遅延や価格変動に見舞われるリスクを含んでおり、複数購買や代替材料の事前評価など、有事を見据えた設計や調達体制の構築が重要になってきそうです。

国内サプライチェーンの構造変化

中長期的な視点では、国内の樹脂サプライチェーンは長年続いた慢性的な供給過剰から需給の均衡へと移行する途上にあります。これまで国内のエチレン生産能力(実質約650万トン)のうち、国内需要を上回る約200万トン超が輸出に回されてきました。

しかし、出光興産と三井化学による千葉地区での装置集約(2027年7月予定)や、三菱ケミカル旭化成エチレンの設備停止など恒久的な能力削減を伴う計画により、国内の生産能力は実質的に450万トン前後まで縮小する見通しです。これは、赤字輸出分がなくなり、国内需要に合致する規模へと供給網が物理的に最適化されることを意味します。

製品開発にかかわる側として注視すべきなのは、供給能力が需要水準に近づくことで、稼働率が改善し、汎用樹脂の価格形成の重心が数量の確保、つまり価格競争から利潤の確保へ移る可能性が高い点であると言えます。

アジア全体でも供給過剰の圧力が弱まりつつあり、これまでのような緩和前提の安価な市場から、需給均衡を意識する市場への構造転換が2026〜2028年にかけて進むと考えられています。

グリーンエチレンへの技術転換

能力削減の一方で、新たな製品開発の追い風となる動きもあります。それが、脱炭素化に向けた基礎化学品のグリーン化です。

近年、石油由来ナフサに依存してきたエチレン製造を、バイオマス原料や再生可能資源を活用したプロセスへと転換する取り組みが世界的に進みつつあります。例えば、旭化成、三井化学、三菱ケミカルの3社は、西日本エリアのエチレン設備を集約するとともに、バイオエタノールからグリーン基礎化学品を製造する設備の導入を進め、2034年度に商用生産を開始することを目指しています。

環境配慮型製品の設計においては、物性を変えずにCO₂排出を削減できるバイオマス由来樹脂やマスバランス認証材料は強力な選択肢となります。自社の次世代製品の環境価値を高めるためにも、こうしたグリーン素材の社会実装の動向をR&Dのロードマップに組み込んでいくことが重要と考えられます。

研究開発を安定して進めるために

エチレンをめぐる「地政学リスク」「設備集約を通じた需給均衡への移行」「グリーン化」という3つの変化は、最終製品の原価や納期、さらにはエコデザインの選択肢にも影響を及ぼすでしょう。

研究開発を安定して進めるためには、カタログスペックだけでなく、材料の供給構造といったモノづくりの上流にも目を向け、材料戦略を検討していくことが重要になると考えられます。

■森川EYE

ナフサは国産ナフサと輸入ナフサがあるのですが、国産ナフサはまさに主に中東から輸入される原油から精製してナフサにしますので、輸入にしろ、国産ナフサにしろ中東情勢にものすごく左右されます。ホルムズ海峡の封鎖が長引けば、いよいよ原油、ナフサとも「さあどうする」ということになるわけでして、SPSの原料のスチレンも同様です。実際、SPSの取引先からは直接、間接的に供給面の問合せが殺到しており、該当関係部署がその対応に追われ始めています。SPSについては直近の3カ月はレジン自体の在庫が潤沢にあるのでお客様への供給不安は全くありませんが、情勢次第では色々な調整が予想されます。現時点では、公表できる対応の詳細はここまでです。






⁠関連リンク

【速報】国内ナフサクラッカー再編と汎用樹脂需給の構造変化:石油化学市場レポ(PlaBase)
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ロイター(2026年3月17日)

日経新聞(2026年3月10日、16日)