
一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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eAxleの基礎知識――3in1からXin1へ :自動車業界よもやま話
2025年10月01日
コラム

コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。
今回からは、自動車の電動化によって注目が集まっている3in1やeAxleについて解説します。その最初となる今回は、3in1(スリーインワン)やeAxle(イーアクスル)の構成要素、特徴など基本的な内容を紹介します。
3in1/eAxleとは?
電気自動車(BEV)の普及に伴って、3in1やeAxleに注目が集まっています。そもそも3in1とはどのような部品のことを指しているのでしょうか?
3in1は、BEVの駆動システムに必要な、モーター・インバーター・減速機(ギアボックス)の3部品を1ユニットに統合した部品です。現時点での主流である3in1の駆動ユニットのことを「3in1のeAxle(スリーインワンのイーアクスル)」と呼びます。2010年代後半に、BEV市場の拡大に伴い、部品の小型化や組み立て性向上を目的に開発されました。
次に、3in1のeAxleの構成要素について、簡単に確認しておきましょう。
モーター
電力を回転する力に変換することで、自動車が走行する力を生み出すのがモーターです。回生ブレーキをかける際には車輪の回転に逆らうようにモーターを制御します。それで車輪はモーターを駆動時と逆方向に回転し、電磁誘導によって電流が発生します。この電流を電気エネルギーとして回収することで、利用できます。
インバーター
インバーターは、DC(直流)をAC(交流)に変換するための装置です。ドライバーのアクセルペダル操作に応じて、モーターの出力を制御する役割も担っています。インバーターがあることでBEVの効率的な走行と性能の最適化が可能です。
減速機(ギアボックス)
モーターの回転をタイヤに伝達する際に、回転数を調整しトルクを最適化する役割を担うのが減速機(ギアボックス)です。高速回転するモーターを、タイヤの走行に適した回転数・トルクに減速するため、「減速機」という名称が用いられています。
eAxle採用によるメリット
3in1のように、複数の部品を一体化したeAxleを採用することで、以下のようなメリットがあります。
小型化・搭載性の向上
eAxleでは、各機能を担う複数の部品を一体化します。そのため、それぞれの機能を持つ部品をばらばらに搭載していた場合と比較して、部品のボディ部分や部品同士をつなぐケーブルや配管などが不要です。さらにECUやECUケースも共通化できれば、部品の小型化と搭載性の向上が期待できます。
軽量化・電費向上
部品の一体化によって小型化を行えれば、部品の重量を軽量することが可能です。部品を軽量化できれば、BEVで重要視される特性の1つとして電費(ある電力で、どの程度の距離を走行できるか)につながります。
コスト低減
部品の小型化や配管・ケーブルが不要になれば、材料の使用量を減らせるためコスト低減につながります。特にBEVの主要部品であるモーターや減速機などの機能を担うeAxleのコストを減らせば、BEVの課題の1つである価格の低減に大きく貢献できます。
3in1からXin1へ

「8in1 パワーシステムアッセンブリー」を搭載した「BYD ATTO 3」 出所:BYD
現在のeAxleは3in1が主流ですが、今後に向けたさまざまなサプライヤーが「Xin1」(エックスインワン)のeAxleを開発しています。例えば、DC/DCコンバーターやOBC(オンボードチャージャー)、BMS(バッテリーマネジメントシステム)に加えて、車載制御ECUなどがXin1への統合対象です。
既にBYDやHuaweiなど中国のメーカーは、8in1など複数の部品を統合したeAxleを実用化しており、量産車への搭載が進められています。国内や欧州メーカーも3in1からさらに拡張したXin1のeAxleを開発中であり、近いうちに量産車に搭載されるでしょう。
一方で、複数の部品を1つのユニットに統合していくことで新たな課題も生じています。例えば、部品の一体化により冷却や電磁ノイズ対策の難易度が高まります。また、一部の部品が故障した際に、複数の機能を持つユニットをまるごと交換しないといけない点は大きなリスクです。
よってXin1の実現に向けては、メリットに目を向けるだけではなく、デメリットやリスクにも注目した開発・搭載戦略が必要不可欠です。
Xin1のeAxleは、BEVだけでなくHEVやPHEVなど他の電動車にも搭載することが可能です。統合部品の増加やさらなる小型化・高性能化を実現するための開発が続けられており、課題の解決に向けては新たな材料・要素技術の開発なども必要になるでしょう。
次回の記事では、高性能なXin1のeAxleを実現するために解決すべき課題について解説します。
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