Xin1を実現するために解決すべき課題(その2):自動車業界よもやま話

2025年11月12日

コラム


⁠コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。  

Xin1を実現するために解決すべき課題は多くあり、統合する機能が増えれば増えるほど開発の難易度は増していきます。

前回の記事では、故障時の影響範囲やソフトウェアの統合などの課題を紹介しました。今回の記事は前回に引き続き、Xin1を実現するために解決すべき課題について紹介します。

物理的統合における発熱・放熱

Xin1の構成要素となりえるパワーデバイスや電源、抵抗器などは、発熱源となります。従来は別部品だったこれらの部品がXin1に統合されることで、発熱源同士の距離が近くなり、局所的に高温の状態が生じます。高温での駆動が増えることで、温度マージンが縮小し作動耐久に悪影響が生じるでしょう。また、局所的な高温によって部品内の温度差が大きくなることで、例えば作動油の物性差や温度検出の誤差など、別部品だった場合には考慮していなかった新たな課題が生じるかもしれません。

特に、局所的な高温や繰り返しの熱負荷による部品耐久への影響は実験的に確認する時間が確保できない可能性があるため、シミュレーションなどの見積もり精度を高める取り組みが重要です。部品統合・小型化が求められる状況の中では部品の配置によって局所的な発熱を抑えることは難しいため、従来よりも耐熱性の高い材料が必要となります。また、発熱部の連続駆動時間を制限する、作動間インターバルを設けるといった制御による対策ができる可能性もあるため、Xin1部品の発熱・放熱に関しては従来の検討範囲を超えた幅広い検討が必要不可欠です。

安定的な電源供給・電気的ノイズ

車載部品には常に一定の電圧が供給されているわけではなく、同一電源ラインの部品が駆動するシーンでは過渡的に供給電圧が低下します。同一電子基板上に複数の部品が搭載されることで、駆動時の電源電圧低下が同時に生じるため、同一部品であっても電源供給ラインを分割して電源低下の影響を分散するなどの対策が必要になります。

また、電気的なノイズへの対策も必要です。DC-DCコンバータやMOSのスイッチングによってノイズが発生するため、構成する部品次第ではEMC試験(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性試験)の結果に大きな影響が生じます。外部への許容されないノイズ出力、ノイズによる信号送受信やセンサの不具合などを避けるためには、ノイズを除去するフィルタの最適化や高いノイズ遮断性能を持つ材料の選定が必要です。

開発・評価プロセスの増大・複雑化

ここまで紹介してきたように、Xin1の構成では従来必要だった検討要素の一部を削減できますが、新たな検討要素が生じます。新たな検討要素の中には、開発・評価プロセスから検討しなければならない項目もあり、一筋縄ではいきません。また、Xin1を構成する要素技術の中には、開発する企業が保有していないものもあるでしょう。

グローバルな競争の激化によって開発期間の短縮が求められている状況において、要素技術レベルの獲得や幅広い範囲の試験のすべてを実機で確認することは困難です。各検討項目を実機で確認、代替品での確認、シミュレーションでの確認、机上検討での確認などに分類し、限られた開発期間の中で優先順位を付けた対応が求められます。

既に3in1のeAxleは量産車への搭載が始まっており、開発段階では国内の展示会において5in1や9in1といった製品の発表も行われています。Xの数値が増える(統合する機能が増える)につれて、製品の小型化や軽量化、部品点数の削減など、メリットは大きくなります。その一方で、前回と今回で紹介したように課題の難易度が高まります。各サプライヤーはこれまで培ってきた独自技術を用いて製品開発を進めているため、どのサプライヤーの製品がデファクトスタンダードになっていくのか、今後の動向に注目です。


プロフィール



⁠⁠一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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