
一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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自動運転車が故障したら?――【その2】故障に備えた制御の悩ましさ
2025年04月02日
コラム
コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。
自動運転車の万が一の故障についても、当然のことながら、さまざまな対策が取られています。
前回の記事では、自動運転車のバックアップ機構について紹介しました。今回は、自動運転車の安全性を確保するために、故障した際にどのような制御が行われるかを確認します。

自動運転システムを構成する部品が故障した場合
自動運転システムが故障した場合には、次のような状態に移行すると考えられます。
- 自動運転機能に関連する故障を検出後、速やかに安全な場所に停車する。
- 自動運転機能に関連する故障を検出後、機能を制限して一定程度自動運転を継続する。
これらの対処を自動運転システムが行う場合、いずれも自動運転レベル4以上に分類されます。しかし、同じ自動運転レベル4であったとしても、故障検出で速やかに安全な場所に停車する場合と比べて、故障後も制御を継続する場合は開発の難易度が非常に高くなります。また、故障した状態での制御継続時に事故が発生してしまった場合に生じる社会的な責任に関する議論も必要です。
さて以降では、それぞれどのような状態なのか、簡単に紹介します。
1. 安全な場所に停車する
もっともシンプルで最低限必要となる故障時の取り組みは、故障が発生した時点で安全な場所に停車するまで自動運転システムが制御することです。故障を検出した時点で、自動運転を正常に継続できないことを車内に通知し、減速を開始。停車後には坂路であったとしても車両を保持できるようにします。操舵系が故障していなければ、路肩へ停車できるようにするのが望ましいでしょう。
現在販売されているほとんどの車両がネットワークに接続されています。故障が発生し安全確保のための制御を開始するタイミングで、自車の状態を車両が自動でディーラーや保険会社などに通知し、速やかに必要なサポートを受けられるようにできるでしょう。
もっともシンプルなフェールセーフで最低限の安全確保はできますが、高速道路上などの簡単に車外に出られない場所で停車したままでは困ってしまいますよね。また、停車位置次第では自車への追突など、二次被害を引き起こしてしまうリスクもあります。ユーザー目線で考えると、多少機能が制限されたとしても従来の目的地、もしくはディーラーなど車両の状態を確認できる場所に移動したいと考えるでしょう。
2. 機能を制限して自動運転を継続する
故障部位や故障の程度によりますが、機能を制限して自動運転を継続できる方がユーザーにとっては利便性が高いです。具体的な制限としては、前車との車間距離を大きく確保する、走行中の最大車速を制限する、停車保持をする際には坂道ではなく平坦な道を選択するなどが考えられます。
このように、何らかの故障が発生し正常な状態で自動運転を継続できない場合に、自動運転を継続できるようにすることは、そう簡単ではありません。前回の記事で紹介した操舵系、駆動系、制動系、通信系、電源系などの全てを冗長構成にし、仮に1つの故障が発生したとしても機能を継続できるようにする必要があります。そのため当然ながら開発コストがかかって、車両の価格が高くなってしまいます。それにもし故障中の制御継続によって事故が発生した場合などは、開発・販売した企業の大きな責任問題につながるリスクがあります。これらが大きな課題となり、日本国内で故障時でも機能を継続できるような量産車が普及するのは、まだまだ先ではないでしょうか。
自動運転車が故障していない状態を考慮しなくてよいのであれば、自動運転車の価格も抑えられ、現在想定されているよりも普及は早くなるのでしょう。しかし、仮に故障の発生確率が低かったとしても、故障時のバックアップ機構や制御を構築しなければ安全性の確保ができません。また、社会的にも自動運転車が受け入れられる説明ができないでしょう。
技術開発の難しさに加えて、社会的責任の考え方の構築や社会全体への普及などが必要であるため、自動運転レベル4以上を国内で普通に利用できるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。
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