木で出来たプラスチックの成形は、強烈な臭い――バイオプラドタバタ劇場【樹脂の臭い編2】:メーカー生産技術だったママのよもやま話

2026年02月25日

コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。バイオマスプラスチックについてのドタバタな製品開発・生産の裏側をこっそりお送りしております。

お米を使ったバイオプラスチックの売れ行きが好調のため、他にも何かバイオプラスチックを使ったおもちゃを発売するという計画が持ち上がりました。

でも、お米と同等、もしくはそれ以上のインパクトがあって、なおかつユーザーにとって安心感のあるものと言えば、何だろう……。

そういうわけで樹脂メーカーと共同で、いくつかサンプルを作成することになりました。

 

木粉を使ったバイオマスプラスチックはどうですかね

今でこそ、木粉を使ったバイオマスプラスチックの製品は展示会だけでなく店頭などでも結構見かけますが、そこはバイオマスプラスチック黎明期。当時調べた限りでは、一般的な製品ではまだ見かけませんでした。

日本は森林大国。製材の際に発生する端材や、間伐材などをどうにか利用できないか、ということでバイオマスプラスチックの原料として期待されていました。おもちゃでも木製は昔ながらのものとしてとても人気があります。

ただ、ST基準に照らすと木製玩具はいろいろ大変なことがあって、品質担当的に言うと正直あんまりやりたくないのが本音。日本の大手玩具メーカーのラインアップに木製玩具が少ないのは、そういった事情があるのです。

……とは言え、海外メーカーや木工工房などから発売されている木製玩具は定番で人気ですし、需要は確実にあります。

木製の風合いを持ちながら、プラスチックで玩具が製造できたらいいことしかありません。早速トライです。

バイオマス、やっぱり楽にはいかないよ

木粉が含まれたバイオマスプラスチックは、ペレットの状態から木のいい香りがしています。色は茶色。お米なら問題ですが、木はもともと茶色いのでいい感じです。着色なしで、このまま木の風合いを生かすことにすれば、多少色のブレが出ても問題ない……はず! 品質担当者のこすい考えが透けて見えますが、お米バイオプラのあれこれを経験した今、先に潰せるトラブルは潰しておきたい~~!!

「……においキッツ!」

成形工場に充満する、いつもとは確実に違う臭い。

そうなのです。木粉のバイオマスプラスチックを成形すると、木の臭いと言うよりも焦げ臭いにおいがするのです。成形機から出てきたばかりの成形品を嗅ぐと、少し甘いような臭いのすぐ後から押し寄せる焦げの臭い。

必死に木の香りを探しますが、圧倒的な「焦げ」が鼻腔内に満ちていきます。焦げを煮詰めて、アクセントにちょっと甘さを足したような香りなのです。

「いい臭いかどうかと聞かれると……、とにかく焦げ臭いとしか」

「若干の化学的な臭いと混ざって、小学校の焼却炉を思い出すなぁ」

「どっかで野焼きしてる? みたいな感じ」

散々な評価です。あ、これ製品化は無理かも。

強度試験用のサンプル分は準備したものの、このままでは使えそうにないな…と思いながら、成形工場からオフィスに戻る道を歩いていると、ベテラン事務員さんが小走りで近寄ってきました。

「どこかで火事起きてる!? 何この焦げ臭いにおい!!」

「木の樹脂のトライしていたんですけど、この臭いやっぱりまずいですよね」

そうなのです。工場があるのは工業団地の中。プラスチックの樹脂臭が漂うのはいつものことですが、いつもと違う焦げ臭いが充満したことで、火事ではないかと疑われてしまったのです。事務員さんが近隣の工場にも事情を話したので通報されずに済んだものの、このままでは消防車が来る騒ぎになっていた可能性もあります。

結局、当工場では木を使ったバイオマスプラスチックは製品化につながりませんでした。臭いだけでなく、ガスが発生するため金型にタールのようなものがべったりとこびりつき、クリーニングも大変だったと成形工場からクレームもきました。

安心してください! 改善してます

木の樹脂ってうまくいかないんだなと思っていたのですが、数年後、うちの工場ではないところで木のバイオマスプラスチックを使った製品が同社から発売されていました。

材料の進化も目覚ましいので、「もっと良い材料が出たのだな……」という気持ち半分、それ、うちの工場ではなく別の工場で成功したんですねという、ちょっと複雑な気持ちです。

今でも展示会で木粉のバイオマスプラスチックを見掛けることがありますが、自分たちでトライしたときのような強烈な焦げ臭がする製品はありません。ですが聞いてみるとやはり成形中は焦げ臭いにおいは多少するということでした。

木の香りのプラスチックを手に取った際は、技術の進歩をぜひ感じてみてください!


⁠バイオプラドタバタ劇場、次回に続きます!

プロフィール



⁠おりも みか
 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
⁠TwitterID;@jilljean0506