
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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お米でできたプラスチックを成形すると、ご飯のにおい!?――バイオプラドタバタ劇場【樹脂の臭い編1】
2026年02月04日
コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。バイオマスプラスチックについてのドタバタな製品開発・生産の裏側をこっそりお送りしております。
先日、高機能素材Weekの取材に行ってきました。バイオマスプラスチックのブースでサンプル展示してある成形品を手に取ると、流れるような動作で臭いをかぐ私。

「あ、それ、そんなに臭いがしないでしょ?」
ブースのスタッフさんが「全てお見通しだ」とばかりに声をかけてきました。は、恥ずかしい……! バイオマスプラスチックを見掛けると、ついつい臭いが気になってしまう。それはバイオマスプラスチックを扱ったことがある人ならあるあるだと信じています。
【この時のおりもさんのお仕事はこちらです】
樹脂の香り、どう感じますか?
成形工場に入ったことのある方なら分かると思うのですが、成形工場内部は常に「樹脂の臭い」がします。化学物質をイメージする臭いなので、慣れていない人からすると身体に悪そうと言われることが多いです。
一方で、お米を使ったバイオマスプラスチックは、ほんのりとご飯のような香りがします。成形中、成形工場はお米の香りに包まれます。1~2分くらいならおいしそうな香りではあるのですが、私個人としては、ごはんのような臭いと化学物質っぽい臭いが混ざった臭いをずっと嗅いでいると、ちょっと気分が悪くなります。(個人差があります)
トウモロコシやサトウキビなどのバイオマスプラスチックはそれほど香りが強くはないのですが、種類によっては原材料由来の香りがするのが、バイオマスプラスチックの特徴の1つだと思います。
【SPSは、ツンッてしますね】
出光興産の森川さんにも聞いてみました。

「樹脂成形時の樹脂のにおいは樹脂によってまちまちです。ポリオレフィンやポリスチレン(SPS含む)はツンとする独特の炭化水素系のにおいですし、PPSなんかは硫黄のようなにおい、PBT、PETなどのポリエステル系も独特ですし、ナイロン系は卵の腐乱したようなにおいなので、樹脂を知らない人にとっては驚くでしょう。成形樹脂に限らず、接着・ポッティング剤、塗装材、生活用品としてのプラスチック製品、その他、熱可塑性、熱硬化性のプラスチック全般で特有のにおいがあるんですよね。人体に悪影響ではないか?と不安に思うかもしれませんが、素材の特性ですので大丈夫です」(森川さん)
おもちゃの検証は「遊ぶ」こと
「おもちゃメーカーって、仕事中もおもちゃで遊んでるんでしょ?」
他業種の方からそう言われることがよくある、おもちゃメーカーのイメージあるあるです。
これは半分正解で、確かにおもちゃメーカーの人間は、仕事中に遊んでいます。でもそれはもちろん業務です。おもちゃの耐久試験のために、実際のそのおもちゃで「遊ぶ」ことがよくあります。
隣のデスクに座っている同僚は、転がると音が鳴るボールのデバック作業の真っ最中。子どもたちに大人気のキャラクターの声が響いています。少し離れた試験場では、ロボットでゲームの押しボタンの耐久性試験中のため、ガシャンガシャンという大きな音がしています。隣の部屋では遊戯機器の耐久試験中。にぎやかな音楽が鳴り響いています。おもちゃメーカーのオフィスはいつもそんな音にあふれています。

ぼ、ぱーぷ、ぱっぷぱぷ、ぱっぷ、ぱぷぅー。(あ、えーとこれは、どう回答しようかなぁ)
お米を使ったバイオマスプラスチックで音を鳴らす笛のような製品を作ることとなり、その耐久試験を担当することになりました。笛の耐久試験ですから、成形品を口にくわえて息を吐きだして音が鳴って1回。それを数千回行うことになります。口にくわえて息を吐きさえできれば良いので両手は空きます。私は耐久試験をしながら、自分のデスクでメールチェックをしていました。
「この書類、ハンコ押し忘れてるよ。あー、そのままで大丈夫。ハンコだけ押して」
「ぱぷ!?ぱぷぱぷぷ」(あれ!? すみません)
「ありがとう~」
「ぱぷぅ~」(はい~)
こんな風景もいつものことなので、誰も突っ込んでくれません。
お米樹脂はお米の香り。成形品もほんのりとしたごはんの臭いがしています。最初は「おいしそうな臭い」なのですが……やっぱり数分くわえっぱなしにしていると、お米の臭いと化学臭が混ざって脳が混乱気味。ちなみに、味はもちろんただのプラスチックですが、ごはんの臭いがずっと顔周りにあるので、食べ物と判定するかどうか脳がせめぎ合っている感じがします。
「耐久試験50回超えたあたりから気持ち悪くなってきたんですけど……これ、検査結果に書いたほうがいいですか」
と、先輩社員に確認してみました。
「えー…、書かなくていいんじゃない?」
「成形工場でもずっと臭いかいでいると気持ち悪くなってくるって言われました」
「そうだ、君のデスクの周りも、たくさんサンプル置いてあるから臭いすごいよ。それだけでちょっと気持ち悪くなってくるもん。デスク周りのサンプルちゃんと片づけてね」
「……すいませんでした」
お米樹脂での笛のおもちゃは無事に発売されたのですが、赤ちゃんが食べ物と勘違いしてしまったのか、たまに「赤ちゃんが歯で削ってしまう」と言うお客様からの問い合わせは何件かあったのでした……。
「バイオプラドタバタ劇場」、次回も続きます! お楽しみに!
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