バイオプラの安定性――バイオプラドタバタ劇場【リピート編その2】 

2026年01月14日

コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。バイオマスプラスチックについてのドタバタな製品開発・生産の裏側をこっそりお送りしております。

今回は、「リピート編」の第2回です。

お米樹脂を使ったおもちゃはすっかり定番化し、何回もリピート生産をしています。売り上げも上々で、数カ月おきにリピート注文が入る製品となりました。 

おもちゃは新製品の際は、たくさんの検査や検証が必要です。外部試験も受けなくてはならないので、手間がかかります。ですが、コンスタントにリピートがある製品であれば、開発部門の出番はあまりなく、生産工場がいつものように納品してくれるのを待っていれば良いのです。もちろん、より効率的に生産するため、日々の小さな問題をクリアするため、そして品質を維持するために生産技術や品質、購買部門にはそれなりの仕事がありますが、新製品に比べればずっと安心していられます。 

 

ある寒い日に

それは寒い冬の日でした。購買担当の部下が真っ青な顔で現れました。 

「割れました」 

「え……なにが?」 

「出荷検査で落下試験をしたら、何個か割れてしまいました(泣)」 

「え??? 新製品の検証のときだって落下試験で割れたことないのに!?」 

私たちは慌てて、納品された製品を確認しました。見た目に特に問題はありません。割れたのは2つのパーツをリベットで結合している製品。割れたものを確認すると、リベットを刺すためのボスが割れてしまっているものが数点あります。

割れた部品を見ても、特にショートショットなどの成形不良はないものの、これは明らかに異常事態です。すぐに成形工場と組立工場に連絡をします。 ところが……

工場担当者「え? 特に、問題ありませんでしたけど……」

成形工場も組立工場でも、特に何も問題はなかったと言うのです。 

私たちは納品された製品を開け、いくつか落下試験をしてみました。しかし、1つとして割れるものは出ません。あの箱だけが悪かったのか……しかし、出荷検査でNGが出たからには、見直し検査を行わなくてはなりません。 

 

 

 

  

ベテラン購買社員「冬だし外は寒いからね。製品が冷えて強度が落ちたんじゃないの?」

プラスチックは冷えると強度が落ちます。この拠点は、雪こそ降らないものの、冬場はマイナス気温になる地方だったので、気温の影響を受けた可能性もあったかもしれませんが……

  

外部試験場の人「いいえ、試験場は温度管理されているので」 (ビシィッ)

 

 
⁠ 

呼び出されたベテラン成形オペレーターは壊れた部品を眺めながら言いました。 

「この材料はやっぱり普通と違う感じがするな。同じ条件で打っても流れなかったり表面がささくれ立ったりする。調整しながらやっているけど、材料に問題があるんじゃないか」 

材料メーカーに問い合わせたものの、明確な答えは得られません。しかし納期は待ってはくれません。全パーツ落下試験はできませんが、抽出検査と全数目視検査を行い、数をまとめて再納品用の部材を準備しました。この抽出検査でも破損する部品は出ませんでした。 

先に納品した製品も確認してほしいという営業からの依頼を受け、納品先の倉庫に出向いて検品を実施。ここだけの話、物流倉庫で検品作業ってプレッシャーもかかるし本当にストレスフルです。

 

 

  

 

 

 

 

  

もう二度とやりたくないよーーーーーッ!

ないよ―…

ないよ…
⁠ない……⁠

⁠⁠(毎回言っています)

 

 

  

 

 

 

通常、落下試験はそれほどシビアな検査ではありません。おもちゃ工場ではおもちゃは作り慣れていますから、設計段階で問題のないような構造にしているため、新製品の検査でも落下試験でNGになることは珍しいくらいです。不良の再現性もなく、原因も不明だったものの、金型を修正し、ボスを太くすることで恒久対策を取ることにしました。 

検証時に発生せず、なぜよりによって出荷検査でトラブルが起こるのか……。これは生産管理的には永遠の謎なのですが、実はバイオマスプラスチックはこうした再現性のない突飛なトラブルがたまに発生するのです。データが取れるほどサンプル数はないものの、日々付き合っていく中で、「やっぱり普通のプラに比べてブレがある」という印象を持っています。 

森川さんは、どう思いますか?

いつもの通り、出光興産の森川さんにも聞いてみました。 

「出荷直前の品質トラブルは、我々の中でもあります。今回の場合、樹脂側の品質は異常なかったということですが、通常の品質検査では分からない品質異常もごくたまにあります」

「SPSでよくあるのは製造工程後の乾燥不足による結晶化不足、ペレットのマカロニ(空洞ペレット)による成形不具合、異物混入(これが一番多い)、成形現場でのコンタミ……樹脂の製造工程を疑ってみるのも、解決策の1つになるので参考にしてみてください」

――出荷直前のトラブルは本当に心臓に悪いですよね……! 

 「⁠バイオプラドタバタ劇場」、次回も続きます! お楽しみに!

プロフィール



⁠おりも みか
 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
⁠TwitterID;@jilljean0506