
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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樹脂の原産地はどこ?――バイオプラドタバタ劇場【リピート編その1】
2025年12月17日
コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。バイオマスプラスチックについてのドタバタな製品開発・生産の裏側をこっそりお送りしております。(こっそりだったんかーい!)
「バイオプラドタバタ劇場」、今回から「リピート編」です!
ところで皆さま。お米、高いですよね。私も一家の主婦ですし、子どもたちもどんどん食べる量が増えているのでお米の値段は家計に直撃しています。自分はお米の味にそれほど頓着がないと思っていましたが、話題になった備蓄米や古古古古米などもチャレンジしてみたところ、やはり味の違いは明白で、新米の美味しさにはとても敵いません。とは言え普段はそれほど産地にこだわることなく、その時その時で手に入りやすいお米を購入しています。
というわけで、今回は樹脂の産地のお話です。
樹脂の産地、はて…
「樹脂の産地ってなんやねん!」というお話ですが、実はお米を使った玩具(前々回までを参照)は、当初お米の原産地を明記していました。今になって思えば、「なぜそんなことを……」というお話ではあるのですが、当時はまだバイオマスプラスチック黎明期。この樹脂の原料となっている素材の原産地を明記することで、安心安全を売りにしたいという考えがあったのだと思います。
令和の米騒動を経験した賢明な読者さまのことですので、その後の展開はすぐにお分かりかと思います。
原産地のお米が手に入らない。
はい、きた。

そもそもバイオマスプラスチックの原料として用いられるよくトウモロコシやサトウキビといった植物も、そのままであれば人間の食べ物として利用できるもの。世界にはその日の食べ物にも困っている人がいるというのに……という、バイオマスプラスチック原料の「取り合い」というのは、今なお課題として指摘されています。お米を使った樹脂も、もともとは古古古古古……米と、すでに食品として食べることが想定されていないお米を使用していましたが、農産物である限り、豊作の年もあれば不作の年もある。他の外的要因、例えば飼料用として使われるために樹脂材料の方まで回ってこないという問題も起こり得るわけです。
お米の樹脂も、やはり発売開始数年が過ぎたところで、当初の入手先からは安定的に入手が難しいという問題が発生しました。しかし、パッケージにはこれは●●県産のお米を使用していますと記載があります。新たな入手先は樹脂メーカーさんが探してくれるとして、生産工場である私たちとしては、まずパッケージの変更が必要です。お米の入手先が変わっても、お米自体が変わるわけではないのですから、私たちとしてはそれほど大きな問題ではありません。
おもちゃはキャラクターものが多いため、リピート生産するものは少ないのです。今のアニメって早いと1クール(3カ月)で終わってしまいます、ですので、リピート生産は工場としてはとってもありがたい。
おもちゃの場合、日本玩具協会が定めるST基準という品質基準をクリアする必要があります。外部試験場に試験を手配して、基準を満たしていることを証明しなくてはなりません。
基準の内容はざっくり言うと以下の内容です。
- おもちゃが壊れやすいと危険なので、定める強度基準をクリアしていること
- 子どもが触れて危険な形状をしていないこと
- おもちゃの材料が安全なものであること
材料の安全性についても、外部の試験場に試験を依頼します。外部試験場へ試験を依頼した場合、その検査結果には有効期限があります。リピート生産の場合は、この材料試験の有効期限が切れていないかどうかもチェックしなくてはなりません。今回は、有効期限は大丈……。ん?
樹脂の原産地が変わったら、材料試験ももう1回受けないと……だめ?
そんなの前例がありません。そもそもプラスチック樹脂の原料(石油)の原産地とか気にしたことがありません。USA産とかUAE産とかそんなのあるの?いえ、厳密に言えばあるんでしょうけれども。
品質部内での協議の結果、試験場に確認してみようということになりました。
外部試験場の人
「試験場としては……、材料が変わったら試験を受け直してくださいとしか言えません」

ですよね。
試験場の人はそう言うしかありません。そして一度聞いてしまったからには、試験を受け直さないという選択肢はありません。
多少ドタバタして特急料金はかかったものの材料試験は無事クリア。リピート生産は問題なく進み、仕様変更されたパッケージには原産地の表示はなくなり、国産という言葉に変更されました。「あそこで試験場に確認する必要はあったのか……」と正直なところ、ちょっと思いましたが、安全であることは何にも代えられません。
出光興産・森川さんの見解は… …
……ちなみに、樹脂メーカーとしては原産地の件はいかがでしょうか? 出光興産の森川さん、教えてください!

「当社の自動車分野のお客さまだと、原産地が変わったSPSレジンを使った場合は4M変更となり、原産地変更品を使った製品品質までお客さまが確認することになっていますね」(森川さん)
「日本で製造したSPSを、マレーシアで製造したSPSレジンにした場合は4M申請が必要です。装置自体も全く日本を同じであってもですので、大変厳しいですね。実際にそのステップを踏んでマレーシア産SPSレジンベースのコンパウンド品に切り替えたことがあります。ただし自動車分野のみで、家電・日用品ではアナウンスするだけで4Mはありませんので、業界によってもルールは異なっています」
――やっぱり自動車業界は厳しいですね。樹脂の原産地、皆さん考えたことはありますか?
「バイオプラドタバタ劇場」、次回も続きます! お楽しみに!
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