成形品に降臨する“白い悪魔”――バイオプラドタバタ劇場【成形色編その3】 

2025年11月19日

コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。


前回、前々回と⁠お米のバイオマスプラスチックを使った積み木の開発で、いろいろと大変だったことを取り上げてきました。

さて、メディアでも取り上げられるような人気商品になったこの商品。メディアで取り上げられると注文数も倍増することになり、私たちはうれしい悲鳴を上げながら生産に取り組んでいました。 

そして……頭を抱えていました。

そうです。バイオプラスチックはそう簡単にうまくいくような材料ではなかったのです。 

 

量産成形になると現れる謎の白い悪魔

前回も少しお話しましたが、この製品は1回の納品数があまり多くありません。ですので、型数は多いものの、成形機を分散させてしまえば量産成形自体はわりとすぐに終わってしまいます。 

しかしメディアで取り上げられ、大きな注文が一気に入ったことで、ある問題が発生しました。それは、成形品に表れる謎の「白いモヤ」です。

どうやらこのなぞの白いモヤは、ある程度成形機が温まってこなれてくると出てくる傾向にあるようで、量産前の試作段階ではほとんど発生しませんでした。 

通常のポリプロピレンなどの成形では全く出てこないこの、白いモヤ。成形品の表面にうっすらと白い膜のような形で現れるため、見るとすぐに分かります。キャビ面にもコア面にも発生します。これはやはり、問題はバイオの方にあるのだろう…と思い、材料メーカーに問い合わせても原因も対処法も分かりません。 

材料メーカーでの試作ではほとんど発生しないということで、やはり量産成形したことで初めて発覚したようです。しかも一度発生すると、ほとんど全ての成形品に出てしまうため、良品を拾うこともできません。 

私たちにとっては、まるで悪魔のような白いモヤの出現……。

さて、どうする!? 

 

生産が終わったら、ぐっすり眠れるって保証はあるんですか! 

判断に迷った私たちは、すぐさま顧客と営業に相談しました。材料メーカーも交え、これがこの材料の「特性である」ということを説明したのですが、製品の美観に直結するものですから、やはりすぐに理解は得られません。 

「裏面は仕方ないので、表面に出ないようにしてください」 

「いえ、場所のコントロールができないのです。ゲート位置も変更しましたが、結果は変わりませんでした」 

「でしたら……表面のロゴにだけは被らないようにしてください」 

 

通常の成形品では、例えばウェルドラインのように樹脂の流路で解決できるものであれば、ゲート位置を変更するなどによって、重要な意匠面に問題が発生しないように対処します。しかし今回のモヤは、出てくる場所も程度も分からず、全くコントロールが効かないのです。強いて言えば、量産が進むと出てくる傾向にある。さらに、材料のロットによっては少ないものもある(ような気がする)。成形技術では、およそ対策らしい対策を取ることができませんでした。 この悪魔めぇーーーっ!

 

となれば、対処法は1つしかありません。 

 

  

  

  

良品を拾う。

 

 

 

 


⁠(成形工場も組立工場も一番やりたくないやつです!!良い子の工場は真似してはいけません!!!)

 

何回もリピートしていくうち、材料側も安定してきたのか、モヤは少なくなっていきました。とは言え完全には消えず、外観基準も徐々に落ち着いていきました。このような対応が取れたのも、この製品が長く愛される商品になったからこそではありますが……。発売してからの数年は、リピートがあるたび眠れぬ夜を過ごした人も少なくありません。 

 

バイオプラスチックの製品が市場に当たり前のように流通するようになった今でも、バイオプラ製品を見るとやはりこの「白いモヤ」を見かけることがあります。そのたびに「お前もか」と共感してしまいます。今でも完全になくすことは難しいようです。 

とは言え、そうした商品を紹介したSNSでも、「白いもや」に言及しているコメントは見たことがないので、気になっているのはプラ関係者だけなのかもしれません……。 

 

出光興産・森川さんの見解は… …

 

この白モヤ問題、当時は解決できなかったのですが、今回は出光興産の森川さんに見解を伺ってみました。 

 

「白モヤは普通成形時のガス巻き込み由来が大半なので分解ガスを疑うことが多いですね」(森川さん) 

 

そうですよね。当時現場でもガスが原因ではないかとガスベントもたくさん付けました。そうでなくてもバイオ系PPってガスが多いので……。でもガス対策では治らなかったんです。 

「たまに、樹脂スキン層の剥がれによる白モヤもある場合があります。つまり、成形品スキン層がはがれて白くなるということで、業界内でははく離白化と呼んでいます。無垢PPに比べてコメ由来PPブレンド系では成形品のスキン層が無垢PPに比べて弱くて、はがれてしまうことによる白モヤになることもあるかもしれません」(森川さん)

現在ではこうしたノウハウも材料メーカーでは多く持っているということなので、現場で解決できない成形不良でお困りの方は一度材料メーカーに問い合わせてみると良いかもしれません。数年越しに私も少しスッキリできたのでした。 

「⁠バイオプラドタバタ劇場」は、次回も続きます! お楽しみに!

プロフィール



⁠おりも みか
 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
⁠TwitterID;@jilljean0506