国内の自動運転開発を加速させるには?:自動車業界よもやま話

2025年04月30日

コラム

⁠コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。  

ここまで、さまざまな観点から自動運転に関連する記事を書いてきました。日本国内の自動運転の進捗に不安を感じたという方もいらっしゃるかもしれませんね……。

そこで今回は、「国内の自動運転開発を加速させるために」どうすればいいか、読者の皆さんと一緒に考えてみたいと思いました。

 

日本国内の自動運転開発には時間がかかっている?

自動車といえばドイツやアメリカなどと並んで、日本もトップグループというイメージがあります。しかし、昨今の自動運転開発において、日本の存在感は大きくありません。過去の記事でも書いたように、自動運転タクシーの運用開始などでアメリカや中国がリードしているように感じます。

自動運転車両そのものや自動運転機能を実現するためのソフトウェアなどは、国内の大手メーカーも海外企業と協力して開発を進めているため、遅れはないでしょう。それに対して、乗用車やタクシー、バスなどのさまざまな自動運転車両を普及させるためには、インフラ整備や関連する保険の整備などが必要です。

具体的にどのような議論が行われ、どのような検討が進められているのかは、公開情報が限られているため、外部からは見えにくいのが現状です。実証試験はさまざまな都市で行われているが、近い未来に私たちの生活が大きく変わるということは考えにくいでしょう。

日本国内で行われている自動運転に関する実証実験の多くは、観光客や地元住民の移動手段を想定して、空港がある都市や地方主要都市で行われています。一方で、日本国内で自動運転が期待される分野の1つとして挙げられているのは、公共交通機関の採算が取れない地域における自動車の運転が難しい高齢者などの交通手段としての活用です。現在行われている実証実験の多くは道路へのマーカー埋め込みなどが前提となっていますが、この方式を利用者の少ない地域で実現するのは難しそうです。

 

日本向けの自動運転普及を加速するためには

自動運転普及を加速させるために必要な取り組みは、自動運転を普及したい目的や車両の用途によって異なります。ここでは自動運転バスや公共交通機関としての自動運転普及を想定します。

自治体の状況、抱える課題は異なるため全ての自治体が同じような自動運転技術の開発が必要となるわけではありません。一定の共通点はありますが、各地域それぞれが自動運転に求める内容、具体的にどのような活用方法が考えられるのかを検討し、実践する必要があります。

検討や実践には当然多額の資金が必要となるため、公的資金の投入も検討すべきです。市民が自動運転の普及に関心を持ち、積極的に意見を述べることが重要です。推進派の議員が増え、声が大きくなっていけば自動運転を普及させるための予算を確保しやすくなるでしょう。また、企業主導のウーブンシティなど、閉じた空間の中でもさまざまなシーンを想定し実証実験を行い、そこで得られた知見を開いた環境に共有していくことも重要です。

もう1点、実証実験後に実運用を開始する際には、自動運転に関するトラブルが生じるリスクがあります。しかし、影響が大きいものでなければ必要な対処をした上で許容するという、寛容な考えが必要です。何かトラブルが起きるたびに過剰な批判をされてしまう状況では、外部からの意見、批判に対応せざるを得ず、行政など開発側の時間がいくらあっても足りません。必要な技術開発やルールの策定、普及に時間をかけられるようにすることが重要です。

また、トラブルが生じた際の責任問題や保険、補償に関しても議論を進める必要があります。そこでは、あらかじめ想定される事態や、それぞれの事態に陥るリスクのある原因を抽出しなければなりません。原因と結果に対して、どういう場合に誰が責任を持ち、どの範囲まで補償をするのかという考えを定めることが重要です。これは、多少用途が異なっていても多くの自治体で共有できる可能性があるため、さまざまな組織が協力し合って取り組むべきであると思います。

日本国内で自動運転が普及するには、まだまだ多くの課題があります。実際に開発に関わるエンジニアに加えて、関係者や利用者が高い関心を持ち、普及を後押しする機運を高めていくことが重要ではないでしょうか。

プロフィール



⁠⁠一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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