おばかが会社を元気にする――町工場が人気プラモメーカーに変わった時:SPSプラモ部
2025年08月19日
コラム
SPSプラモ部では、米粒1つ1つがパーツになっている「おにぎりプラモデル」を組み立ててみました。
SNSでは、組み立てるのが「地獄!」と評判だったのですが、思ったよりは苦戦せず、組み立てることができました。でも、それなりに大変ではありました。
>>地獄のプラモ「おにぎりプラモデル」を握ってみた:SPSプラモ部

おにぎりプラモデル(スタジオシュウトウ)
狂気の沙汰!? ともいえるプラモデルを作ったメーカーさんは一体どんな会社さんなのかと、秋東精工株式会社にお邪魔することに。「スタジオシュウトウ」ブランドの製品開発を担当する藤原さんと小泉さんにお会いでき、いろいろ楽しいお話が聞けました。
>>おにぎりプラモの正しい組み立て方と米の汎用性:SPSプラモ部
上の記事ではメーカー公式(?)の組み立て方や、開発秘話を紹介しています。おにぎりプラモは、もともとあった寿司プラモの亜種であるという説明も受けました。

寿司プラモ:おいしそう
お話を通じて分かったのは、秋東精工が、単にふざけたくて、寿司とかおにぎりとか、変なプラモデルを開発したわけではなかったこと。そして、このユニークな取り組みの成功で、会社に新しい事業をもたらすことになったということでした。

(左)藤原千誉さん、(右)小泉敬志さん
コロナ禍で沈んだ社内を元気にしたかった
秋東精工は、元々金型メーカーとして、メーカーの顧客からの依頼を受けて金型を製造・納品してきました。著名なメーカーの精巧なプラモデルの生産をたくさん手掛けてきた同社ですが、もともと自社のオリジナル製品があったわけではなかったのです。いわゆる「下請け」メインの町工場でした。しかし、コロナ禍において金型の受注が大幅に減少。それをきっかけに、会社として新たな事業の柱を模索するようになったそうです。
当時の社内はなんとなく沈んだ空気で「ものづくりが好きで入った会社です。こういう時だからこそ、ものづくりでおもしろいことをやって元気を出したいと思いました」と、藤原さんは言います。
面白い製品のアイデアを求めて、藤原さんが、X(当時は、Twitter)を見ていると、たくさんのシャリがランナーでつながれた絵とともに「寿司のプラモデル」のアイデアが紹介されていた投稿がものすごいバズっているのを発見。「よし、作ろう」と思ったそうです。
同社には、過去に食品サンプルの制作経験がありました。その知見を生かして、寿司プラモが作れるかもしれないと藤原さんが考えたのです。投稿主にもすぐに連絡を取って許可をもらってから、開発に着手しました。

「寿司プラモ? 何言ってんの?」 社内からは戸惑いが……。
社内では、寿司プラモの開発に対して、案の定、疑問に思う人もいたそうです。自社製品開発の経験もない上、プラモデルの市場でも見たことがない斬新すぎるアイデアだったわけなので、仕方がないことです。そういう雰囲気の中、味方になってくれた一人が、小泉さんだったそうです。
社長のバックアップと成功体験
社内の雰囲気を変えるために、「特に何か、頑張って皆の説得を試みるなどはなかった」と藤原さんは振り返ります。純粋に、「やってみたい」と思ったことを、シンプルに遂げただけでした。雰囲気が変わった理由については、「予想に反して売れたことがやはり大きい」と。
最初に販売したマグロの寿司プラモは、想定の10倍以上を売り上げます。売れるかどうか全く分からない製品であったので、売り上げは控えめに予想をしていたそうです。それを差し引いても大成功といっても過言はなし。それで社内の雰囲気は「どんどんやれ」という前向きな空気へ一転。若い社員を中心に、新しいプラモデルのアイデアが続々と出てくるようになったそうです。
藤原さんがプロジェクトを前に進められたのには、強力な味方が一人いたことも大きいのでしょう。当時の社長であった柴田忠利さんです。藤原さんのアイデアに対して目くじらを立てることなく、やってみたらいいと応援してくれたのだそうです。
秋東精工の親会社は、プラモデルやカプセルトイなどで有名で「グッスマ」の愛称で知られる、グッドスマイルカンパニーです。スタジオシュウトウの販売を担ってくれるのも同社です。
スタジオシュウトウが新製品を作る際にはグッドスマイルカンパニーの承認も必要です。ですがグッドスマイルカンパニー側は、厳しくアイデアを突っぱねることなく、スタジオシュウトウの斬新で大胆なアイデアをなるべく尊重してくれていると藤原さんは言います。「 『成金おじさん』(※)をプラモ化しようぜ」とか、よくわかんない感じの自由奔放なアイデアがどんどん出てくるのだそうです。「もちろん、何でもよいわけではなく、『これはさすがに売れないよ!』とボツになることは結構あります(笑) 成金おじさんもボツになっています」
※和田邦坊「成金栄華時代」の「どうだ明るくなったろう」と言っている、通称「成金おじさん」の風刺画がフィギュアになったと話題になっていたからだそうです。(詳しくはググってください)
顧客から生産を請け負う場合では、顧客が提示した予算や価格に従うことになります。一方、自社ブランドの製品が作れるということは、自社で価格が決められます。生産設備も自社にあるということも大きな強みになります。生産数はむやみに増やさず、比較的小さなロットで生産して、売れ行きを見ながら生産量をコントロールしているそうです。
「現在、スタジオシュウトウの製品の売り上げは好調で、今のところ全て黒字です」と藤原さん。スタジオシュウトウは、今では秋東精工における重要な事業の軸になっています。
目下、新製品として企画中であるのは「兵馬俑(4体セット)」のプラモデルだそうです。もしリアルに再現したい場合は、結構、たくさん買わなければいけません。いくらかかるんだろうか……。

中国の、なんかこういうやつ
藤原さんたちは、プラモデルのアイデアがもっと欲しいそうです。読者の皆さんも何かいいアイデアが思い付いたら、ぜひスタジオシュウトウに知らせてあげてください。製品化してくれるかもしれません。

