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おにぎりプラモの正しい組み立て方と米の汎用性:SPSプラモ部

2025年06月24日

コラム

読者の皆さまこんにちは。編集担当の小林です。

「地獄級の難しさ」と話題だった「おにぎりプラモ」に挑戦したSPSプラモ部でしたが、「あれ、そんなに地獄ではなかったのかなー?」といった感じでした。

>>地獄のプラモ「おにぎりプラモデル」を握ってみた:SPSプラモ部

プラモ上級者の森川さんは1時間でぱっぱと組み上げています。プラモ永遠の初心者小林は米粒に接着剤をべったべたに塗ってから少しずつ握って固めてなんとか3時間で作りました。楽しかったですよ。ぶっちゃけ、当分作りたくないけど。

今回は、おにぎりプラモを開発した「スタジオシュウトウ」ブランドを展開する秋東精工株式会社でチーフを務める藤原千誉さんと、リーダーの小泉敬志さんに突撃取材しました。

(左)藤原千誉さん、(右)小泉敬志さん

今回は、なんでこんなおばか……えっと、もとい!! ユニークな!! 製品をなぜ開発しているのか、どのように製品開発をしているのかなど、気になったことをざっくばらんとお話をお伺いしてきました。

 

おにぎりプラモの正しい組み立て方

先日の記事でも紹介しましたが、「おにぎりプラモ」には、組み立て説明書が付いていません。手がかりは、パッケージに書かれた「愛情込めて、握ってください」「組み立てるためにニッパーなどの工具と接着剤が必要」と言う情報だけ。

愛情込めて、握ってください

「皆さんそれぞれ思い浮かぶ姿があるのかと思って、あえて付けませんでした」と藤原さんは言います。

「パッケージに載せている作例は、梅干しが見えている方が映える(ばえる)かなと思いまして、そうなっています。梅干しを隠していただいても、海苔をべったり被せても、俵型であってもOKです」

分かる。分かりますよ。でもね、そもそも作るもののイメージが頭の中にあっても、何をどうやったらいいか、分からなくない? 私の心のキムタクが「ちょっ待てよっ!」とイケボで騒いでいます。

小林の組み立て過程

小林が「接着剤をべったべたにして握りました」という話をしてみたところ、「あー雪だるま方式ですね。それ正解かなと思います」と藤原さん。思いがけず、私の作り方が「正解」だというお墨付きをいただけました(?)。具体的にどうやって組むかも、その人次第で良いようです。

左が小泉さんによるお手本、右は小林のアレ:見とれるほどの美しい三角。挫折したスカウト弁当がここに実現……。

藤原さんと一緒にプラモ開発をしている小泉さんに、おにぎりプラモの組み立て方についてお伺いしました。

「まず要らないクリアファイルなどをカットして三角の枠を作ってから、底に米をパラパラとまいて、接着剤を塗って、その上にパラパラと米をまいてという具合に、少しずつ積み重ねていくのが一番簡単だと思います」(小泉さん)

メーカー公式(?)の組み立て方法は、まさかの3Dプリンタ式(手動だけど)。何だかまじめで几帳面な感じです。PS(ポリスチレン)製ではない、PVC(塩ビ)製の海苔については、プラモデル用の接着剤ではなく、アロンアルファなど(シアノアクリレート系瞬間接着剤)を使うとよいそうですよ。小泉さんメソッドでの制作時間は、「1.5時間」とのことでした。森川さん、製作時間は公式に勝ちました。

また、小林が「2個組み立てたかったが、1個で挫折した」旨、お伝えしたところ……、藤原さんも「私も1つが限界。2つも組み立てたくないですね」とおっしゃっていました。

社内でのおにぎり組み立ては小泉さんの担当だそうです。

 

作っておいてよかった、米

おにぎりプラモのパーツは、とにかくリアルさにとことんこだわっています。

おにぎりプラモの米粒数は1456粒あります。この数については、実物を計測した平均値に基づいているとのことです。「コンビニでいくつかおにぎりを買ってきて、全部ばらして数えました」と藤原氏。米粒の寸法については、1粒1粒ノギスで採寸した数値の平均値を基にしています。3Dモデリングも社内でやっています。

梅干しパーツも秋東さんの内製ですが、海苔パーツについては食品サンプルのメーカーさんが提供してくださっているそうです。「射出成形金型で作れませんからね……」(藤原氏)。

おにぎりプラモの基になった製品は、お寿司プラモです。2021年に登場した当時、マグロとサーモンのお寿司プラモがSNSで大バズり。その後も寿司ネタのラインアップが順調に増えていきました。

おにぎりプラモは、その米粒(シャリ)のパーツを使用した、いわゆる「亜種」なのです。「寿司ネタはだいぶ網羅した感あって、もう少し違うモノがやりたいなぁと思って」(藤原さん)

これまでの寿司プラモ「お寿司はそろそろおなか一杯」(藤原さん)

そして今回のおにぎりも大当たり! 現在、新製品として「赤飯おにぎり」を準備中ということです。「年末か来年早々にはリリースしたい」(藤原さん)。

「最初にシャリを作っておいて本当によかったなぁって。ここまで汎用性があるとは」と藤原さん。確かに、お寿司やおにぎり以外にも、いろいろな食べ物が作れそうです。

次回は「スタジオシュウトウ誕生秘話」

秋東精工さんはプラモデルの工場として50年近くの歴史があるのですが、自社オリジナルの製品があったわけではありませんでした。以前までは、大手のプラモデルメーカーの生産工場としてお仕事を受けることが中心だったのです。

コロナ禍で仕事が激減してしまった時、何だか暗い雰囲気になってしまった社内で「何か新しいことをして元気を出したい」という藤原さんの思いから自社製品の企画が始まったのだそうです。

そして……、社内では「なぜ寿司か」という微妙なムードになったそうです。「当時、反対してくる人はいました」と藤原さんは言います。その中で「面白そう」と乗ってくれた一人が小泉さんだったのです。

そんなおばかで楽しい思い付きが、その後「スタジオシュウトウ」というオリジナルブランドとなり、会社の運命を大きく変えることになるとは、夢にも思わなかったのです(多分)

「あまり乗り気でない人たちの心をどう変えたのか」「寿司プラモの元ネタ提供者(ほかにいる)」「メディアですごい話題にはなっているものの、ちゃんともうかっているのか」――などなど、気になることをいろいろ聞きました。次回の記事をお楽しみに。


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