
高原忠良(たかはら・ただよし)
2020 年にTech―T設立。
「現地現物」の精神で部品分解調査や、中国・東南アジア現地取材をもとに、⾃動⾞産業の将来動向まで多領域で情報発信中。
プラスチックや樹脂部品生産や材料の生産・開発に携わる自動車用途プラスチックの第一人者。
1980 年、山形大学理学部卒。2008 年、山形大学理工学研究科卒(工学博士)。
1980~1989 年、新日本無線(現:日清紡マイクロデバイス)。
1989~2012 年、トヨタ自動車。
2012~2018 年、サムスンSDIなどグローバル企業で勤務。
2017-2025年、埼玉工業大学 客員教授など産学両分野で活躍。
セミナー・メーカー支援・中国視察ツアー・日経クロステックへの寄稿など幅広く活躍中。ホームページでも各種調査情報を元に、記事や動画を多数掲載
https://www.tech-t.jp/
アジアでは日系車を差し置いて、現地系と中国系のEVが伸びてます:ティータイム
2026年10月07日
コラム

本コラム「ティータイム」では、「自動車×プラスチック×脱炭素」を中核に活動するコンサルティング企業・Tech-T の高原忠良が、自動車関連の技術やビジネスの話題をお届けします。
前回は、新車販売台数のグローバル動向と、中国・EU・日本の実績を紹介しました。その際、グローバルでのEV比率はすでに16%を超え、いわゆる「キャズム」を突破して普及拡大期に入っていることも紹介しました。まずは、その際の説明グラフを再掲します。

【写真】2025年新車販売 主要国・地域別パワートレインシェア(グローバル/中国/EU/日本)
筆者はアジア各地の自動車市場トレンドを継続的に調査しており、おおよそ2年ごとに現地を巡回しています。今回は、その中から台湾・タイ・ベトナムの最新事情をご紹介します。
これらの地域に共通しているのは、日系から現地系あるいは中国系への市場シェアのシフトが急速に進んでいることです。そしてそれは同時に、EVへのシフトでもあります。
残念ながら日系によるEV開発は出遅れたままで、その結果は、以下に紹介する現地の実情に如実に表れています。
台湾: 現地鴻海系のEVを市場投入
2024年年初、台湾最大の自動車メーカーである裕隆汽車からEVが販売されました。同社のプレミアムブランドである納智捷(LUXGEN)からの「n7」です。同年10月、あらかじめ日本から取材を申し込んでおり、指定されたショールームを訪問し、実車確認・試乗(同乗にて)しました。ちょうど市中でも見かけ始めた状況でした。

【写真】指定されたLUXGENのショールームを訪問(Tech-T撮影)
「n7」は鴻華先進(Foxtron)が開発したModel Cをベースにしています。ちなみに鴻華先進は鴻海精密工業(Foxconn)と裕隆汽車との合弁です。すなわち開発・製造・販売のすべてを台湾企業のみで行っている点が特徴です。

【写真】LUXGENのEV「n7」
実際に体感した完成度は高く、先進性の高いEVという印象を受けました。ショールーム訪問や試乗、AI音声入力デモの様子は、YouTube「Tech-Tチャンネル」で公開しています。QRコードから当時の様子をご覧いただけます。
ショールーム訪問の様子(Tech-Tチャンネル)
LUXGEN n7 試乗(Tech-Tチャンネル)
AI音声のアシスト(Tech-Tチャンネル)

タイ: 中国系のEVが急伸、日系危うし
タイのモーターショーでは、中国系EVメーカーの展示ブースが軒並み人気でした。街中でも中国各社のEVをよく見かけ、とりわけBYDは幹線道路沿いの広告も多く、地方まで普及が進んでいる状況でした。

【写真】主要道路沿いのBYDの販売店と看板(Tech-T撮影)

【写真】バンコクMOTOR EXPOで大人気のBYDの展示ブース(Tech-T撮影)

【写真】タイ全土のどこでも見掛けるBYD(ATTO3/SEAL/DOLPHIN)
その結果は数字にもはっきり表れています。タイの新車販売における開発母国別シェアを見ると、2021年には日本が87.5%を占め、中国はわずか4%でした。ところが2025年(推計)には日本が69.0%まで低下する一方、中国は22.5%まで急伸しています。わずか4年で、日系シェアの一部がそっくり中国系に置き換わった格好です。

図1 タイ新車販売 開発母国別シェア(出所:JETROおよびFTI(タイ工業連盟)統計を参考にTech-Tにて作成)
ベトナム: 現地系のEVが激増、トヨタ車からの置き換えが進む
ベトナム最大の民間コングロマリットのビングループは、不動産・医療・教育とともにEVの開発製造も手掛けています。ビンファストがその企業で、BMWからの開発製造ライセンスにより2019年に自動車製造を開始しました。しかしわずか4年でガソリン車の製造を終了し、2022年にはEV専業企業に生まれ変わっています。
ビンファストが地元のタクシー会社にEVを供給し始めてから半年ほどのタイミングで取材に行きましたが、トヨタ製からビンファスト製に急速に切り替わる様を確認しました。

【写真】ベトナムで急速に普及していたビンファスト製のEVタクシー(VF e34/VF8、Tech-T撮影)
図2に示すようにトヨタに限らず外資系は大幅にシェアを落としており、ベトナム製すなわちビンファスト製のEVに置き換わっています。

図2 ベトナム新車販売 開発母国別シェア(出所:JETROレポートをもとにTech-Tにて作成)
われわれ日系サプライヤーのお客様は誰か?
材料メーカー、あるいは部品メーカーの我々は、当然、日系完成車メーカーやそこに繋がるTierを主要なお客様としてきました。
しかし、前述の状況を鑑みた際、お客様のシフトを考えるべきタイミングです。もちろんこれまでの日系とのビジネスは維持・醸成しつつも、新顧客になり得る中国系や、各国の現地系に注力すべきでしょう。
我々は日系とのビジネスに手慣れているものの、高い品質要求と徹底した原価低減を求められてきました。我々にとってのブルーオーシャンは、意外と新興のEV関連企業かもしれません。
関連リンク:
日系メーカーもEV開発を加速すべきと警笛を鳴らす、筆者の執筆記事(外部)のご紹介です。
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【オンデマンド】IT企業が塗り替える中国EVビジネス、トヨタの"対抗"戦略
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2 車載プラの最新トレンドを知るセミナー@名古屋
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