
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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グミをつくるおもちゃのはなし② :メーカー生産技術だったママのよもやま話
2026年10月21日
コラム

製造業ライターのおりも みかです。以前はプラスチック製玩具メーカーで生産技術・品質を担当していました。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けしています。
グミを作るクッキングトイ、コスト面から射出成形ではなく、真空成形で作ることに挑戦です。果たして無事発売できるでしょうか? >>前回
真空成形とはなにか
真空成形とは、熱して柔らかくした樹脂のシート真空引き(空気を吸い出す)することでシートを金型に押し当て、金型の形状を転写する成形方法のことです。私たちの生活で身近なものは卵パックなどに用いられるブリスターパックです。そのほか自動車のインパネやお店の什器など、さまざまなものに使用されています。大型や薄型のものを低コストで作ることができる成形方法です。
一方で、射出成形と比較すると細かい模様などを転写することが苦手であったり、抜くことができない複雑な形状は成形できなかったりという問題もあります。おもちゃでは包装資材としてブリスターパックはよく使用するので馴染み深い成形方法です。射出成形とは機械が違うので、いつもとは違う成形屋さんにお願いしなくてはなりません。場合によってはいつも包装資材を購入するところでは成形できない可能性もあるため、外注先を探す必要が出てくる可能性もあります。まずは検証をしてみましょう。

真空成形でグミの型は作れるのか
さて、真空成形でグミの型は作れるのでしょうか?懸念点を挙げてみましょう。
- きちんとキャラクターの造形が転写できるのか
- 求める形状を作ることができるのか
- グミを作ってきれいに取り出すことができるのか
- 耐久性はどうか
- 端面が子どもにとって安全かどうか
- 熱したグミ液を入れても変形しないかどうか
- 衛生面は問題ないか
- 成形スケジュール、成形コスト、金型費用は見合うのか
もっとも心配なのは、ちゃんとグミが作れるのか。そして製品の肝であるキャラクターの形状が転写できるのかという点です。真空成形では、量産用の本型はアルミなどで作ることが多いですが、仮型として石膏型を作ります。まずは石膏型を作って試作サンプルを用意し、各種検証からスタートです。
まずは樹脂の種類を決めます。一般的に真空成形のブリスターパックで用いられるのはPET(ポリエチレンテレフタレート)やPS(ポリスチレン)です。他にもPVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)も用いられます。実際に食べられるお菓子を作るクッキングトイは、ST基準(玩具安全基準)のほかに食品衛生法にも適用します。ですので、食品に使えるグレードの樹脂でなくてはなりません。
そこで、PETとPS、PPでサンプルを作成しました。検証の結果、安全性と強度、そして80度ほどのグミ液を入れても柔らかくなりすぎたり変形したりしないPETを採用することに。包装で用いられるブリスターパックよりもぶ厚いPETシートを用いることで、強度面は概ねクリアできました。
真空成形はシートが型からはみ出た部分をカットしますが、この端面で子どもが指を切ってしまう恐れがあります。実際私も梱包作業のラインに入っていて、ブリスターで指を切ったことがあります
(まぁ、梱包ラインではブリスターよりも段ボールや紙で指を切ることが圧倒的に多いですが……)。
抜き型を工夫することで、危険な端面(シャープエッジ)にならないようにしました。場合によっては二次加工が入る可能性も捨てきれませんが、ひとまずクリアできました。
作るグミのサイズは大人の親指ほどのサイズ感。キャラクターの造形は比較的細かいものの、子ども向けキャラではあるので全体的に丸っこいものが多く、片面であれば真空成形でも問題なく成形できることが分かりました。まずは一安心。
続いて耐久性です。卵パックやおもちゃの包装に使用するブリスターパックは、一度形状が変形してしまうと戻りません。グミを外すときにどうしても型を押し出す必要があるので、あまり柔らかすぎたり薄すぎたりすると、変形して一度しか使用できないことになってしまいます。事前に設定した耐久回数はクリアしなくてはなりません。これも樹脂シートの厚みを厚くし、硬めの樹脂シートを選定することで対応できました。

参考 ブリスターパックに入った状態で売られているグミの例:記事本文の製品とは無関係のものです(編集部撮影)
中国の工場を視察
この製品を製造しているのは中国の工場です。いつも使用している工場ですが、持っている成形機は射出成形機のみ。真空成形の設備はないので、外注にお願いしています。中国で手配するブリスターは、埃っぽくて触ると指が真っ黒になることもしばしばです。製品説明で「お菓子を作る前によく洗ってから」と記載はしますが、やはり口に入るものを作る道具が汚いのは嫌ですよね。
外注先へ出張して、真空成形工場を視察しにいったのですが、日本人の感覚的には、ちょっと、衛生管理の面で厳しい……のかな、と。中国人スタッフで、日本の仕事に慣れている人だと、中国の工場についてはやはり「感覚が違うな」と思うそうです。

もちろん汚いものを口に入れて平気というわけではありません。ただ、「汚いと思うなら自分で洗えばいいだけでしょう。何が問題なの?」と思う人が多いのです。例えば、レストランに行く際は、食事前に自分たちで食器をお湯で洗いますし、スーパーで購入した野菜や果物もすべて洗剤をジャージャーかけて洗ってから食べるのです。合理的、というか信用していないのですね、他人を。
理由はあるにせよ、考え方が残念ながら合わないため、外注先は新たに選定し直すことになりました。コストは多少上がりますが仕方ありません。
その後、なんとか新しい外注先も見つかり、グミ型の問題はなんとかクリアです。
さぁ、いよいよ量産スタート……と思いきや、なんとその前に大事件が発生してしまいました。次回に続く!
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