おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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電子レンジでお皿を溶かしたことがある人、集合!:メーカー生産技術だったママのよもやま話
2025年06月10日
コラム
製造業ライターのおりも みかです。「メーカー生産技術だったママのよもやま話」では、主にプラスチック製品の開発時におけるドタバタエピソードや、子育てをしながら日々接するプラスチック製品に関するあれこれをお届けいたします。
これ、やったことあるよね、ね?
製品の開発をしていたとは言え、私も日々失敗を繰り返しています。正直に言うと、そうなるのは分かっているのについやってしまうのです。
「洗い物が少なくなればいいな」とか、「時間がないから」とかさまざまな言い訳をしつつ、要するに横着しているわけです。
こちらはスーパーで購入したお惣菜の焼き鳥を、お皿に移せばいいのにパックのまま電子レンジで温めた結果、パックが溶けて変形したものです。
※焼き鳥は筆者がおいしくいただきました。
容器の底に穴が開き、電子レンジの中がタレまみれになってしまった経験がある方、正直に名乗り出てください。
私もです。これをしたことがある方全員、仲間です。
(編集担当:何度もやっています。)
このような使い捨てフードパックの材料は、ポリエチレンテフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)などさまざまです。一見同じように見えるフードパックですが、材料が違うことがあります。使い分ける理由としては価格もありますが、例えば温かいものを入れるかどうか、ヒートシーラーで熱圧着をするかどうか、透明度が必要かどうかなどで使い分けます。
こうしたフードパックの全てが電子レンジNGかと言うとそうでもありません。中には使えるものもあります。ですが私の経験上、焼き鳥や揚げ物などはパックが変形したり溶けて穴が開くことが多いです。
電子レンジで容器やお皿を溶かしてしまう。使い捨て容器だけでなくとも、プラスチック製のお皿や保存容器でやってしまったことがある人は少なくないのではと思います。前回もお話しましたが、市販されている食器や保存容器には電子レンジに使用できるかどうかの記載がされています。「電子レンジOKのはずなのに溶けてしまった」という経験がある方はいませんか?
黒いバレンタイン事件
私はフードパックが溶けるたび、思い出す出来事があります。私が通う中学校は、バレンタインデーだけは手作りお菓子の持ち込みが許されていました。女子中学なので、必然的に友チョコ交換会になるのですが、みんなこぞって手作りお菓子を持ち寄り、先生たちも交えてお菓子パーティーが催されます。
ある年、バレンタインデーの前日に友人の家で一緒にお菓子を作ることになりました。確かその時は、マシュマロチョコバーを作る予定だったと思います。チョコレートを溶かし、マシュマロやクッキー、ナッツなどを混ぜ込んで冷やし固めるだけの簡単なお菓子です。
私と家主であるKちゃんが中に入れる具材やトッピングを準備する間、もう一人の友人Aちゃんがチョコを溶かすことに。
Aちゃんは電子レンジOKのタッパーウェアにチョコレートとマシュマロを入れて電子レンジにかけ、おしゃべりをしながら作業している私とKちゃんの会話に混ざってきました。
「Aちゃん、チョコレートは?」
「大丈夫、電子レンジに入れたよ」
ケミカルな鼻をつく臭いで私たちが振り返ったとき、電子レンジのすき間からはもうもうと白い煙が出て、電子レンジの窓から一瞬赤いスパークが見えた気がしました。
家主のKちゃんが慌てて電子レンジを停め、電子レンジから容器を取り出し、キッチンシンクに投げ込んで水を掛けました。チョコレートとマシュマロはもちろん真っ黒に焦げ、タッパーウェアは変形するだけでなく底に穴が開き、電子レンジの白いターンテーブルには焦げ跡がついていました。
後に最高学府に現役合格するクラスの秀才Aちゃんが取り乱している姿を見たのは、後にも先にもこのときだけです。
おいしいものは油と糖で出来ている
チョコレートを溶かすときは湯せんにかけるか、電子レンジの場合は様子を見ながら10~30秒ほどの短時間をこまめに何度かに分けてかける必要があります。焦げる危険性があるためです。
ではなぜ、チョコレートだけでなく、電子レンジOKなはずのタッパーウェアまで溶けてしまったのでしょうか。
電子レンジは、マイクロ波で食品に含まれる水分子を振動させることで加熱します。ですので、陶器やガラスなどは乾いた状態で電子レンジにかけても温まることはありません。プラスチックも同様です。食品を加熱したときに食器や容器まで熱くなるのは、食品の熱が伝導しているためです。
油や糖は水よりも高温になるため、これらが多く含まれている製品を電子レンジで加熱すると食品用容器や食器の耐熱温度をはるかに上回り、溶けて変形したり穴が開いてしまうというわけです。焼き鳥も、タレが集まっている部分が溶けてしまっていますね。
チョコレートとマシュマロ、そして焼き鳥はどれも油と糖が多く含まれる食品です。
おいしいものは油と糖でできていますね。
電子レンジで加熱する際は、どうかお気を付けください。
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