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自動運転レベル5時代には飲酒運転がないの?:自動車業界よもやま話

2025年03月18日

コラム

⁠コラム「自動車業界よもやま話」では、自動車業界で働く人の視点から、自動車関連のさまざまな話題を取り上げていきます。  

自動運転レベル5が実現した未来はどのようになっているのか――前回は、「運転免許が不要になるのか」や「自動運転車以外の車はどうなるのか」について取り上げました。今回は、「自動運転車は高くなるの?」「飲酒運転の定義は?」「自動車を運転する仕事は減るの?」といった疑問について考えてみます。

自動運転車の価格は? 

自動運転車にはさまざまなセンサーが搭載され、技術開発には膨大な資金が投入されています。その費用を回収するために、現在普及している自動車の価格帯よりも、ある程度は高くなるでしょう。

ただ、自動運転車が広く普及するような遠い未来になると、生産工場の合理化や物流の改善が進みます。ボリュームメリットにより、自動運転車の価格は徐々に低減していくでしょう。また、多くの企業が自動運転車の開発に取り組んでいることから、企業間の価格競争も厳しくなることが想定されます。インフレを考慮しない場合、現在の車両クラスと同様のクラスで自動運転機能が付帯した車両の価格は、現在とあまり変わらなくなるのではないでしょうか。現在広く普及している先進安全系の機能は便利で安全確保に大きく寄与していますが、自動車本体の価格が先進安全系の機能搭載によって大きく上昇しているわけではありません。これと同様のことが、自動運転機能の搭載によって生じると考えられます。 

一方で、多くのユーザーが自家用の自動運転車を保有するかは分かりません。ほとんどのユーザーは自家用としては持たずに、カーシェアリングのような形で利用する未来になることも十分考えられます。普及台数が増えない場合には、自動運転車は高額なままで気軽に購入できない価格帯になるという可能性もあります。 

飲酒運転は罰則に問われない?  

自動運転車ではドライバーが運転をしないので、そもそも飲酒運転という概念がなくなるかもしれません。ただ、前回の記事で触れたように自動運転用の免許が必要になるという前提をおくと、乗車している人員の中に自動運転免許を保有していて、なおかつ飲酒していない人が一人以上は必要になると考えています。 

飲酒していない免許保有者が必要な理由は、トラブルが発生した際の対処が主な目的になるでしょう。この対応は実際に該当の自動運転車に乗っていなくてもできる可能性があるため、運転代行の代替サービスとして、飲酒時のサポートを行うビジネスが生まれるかもしれません。他にも、自動運転の普及によって新しいサービスが次々に生まれそうですね。 

自動車を運転する仕事は減るの?

自動運転車の実現を目指す目的の1つは、労働力不足の解消です。通販の普及・拡大などによって物流を担う人材が不足していますが、自動運転が実現できれば課題解消に繋がります。自動運転の普及が進めば進むほど人件費がかからない自動運転への置き換えが進み、これまで物流を担っていた長距離トラックのドライバーやタクシードライバーの仕事は大幅に減っていくのではないでしょうか。特に、歩行者や自転車などを考慮する必要がない高速道路を利用するような物流に関しては、そう遠くないうちに自動運転車に置き換わっていくと考えます。 

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⁠自動運転車が普及すると、どうなるのだろう

自動運転車の普及は、広く見れば多くのメリットがあります。しかし、まだまだ決めなければいけないことが多く、局所的に見ればデメリットになることも多くあるでしょう。すぐに大きな変化が起こることは考えにくいですが、直接的・間接的に影響を受ける人は多くいますので、興味を持って動向を把握しておくことが重要です。 

プロフィール



⁠⁠一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、CASE関連の製品開発を担当。2020年春より、製造業関連のライターとして活動。
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