中嶋嘉祐(なかしま よしひろ) フリーランス。理系学生向けの就職情報メディア『理系ナビ』の初代編集長。転職情報ポータル『キャリアインデックス転職』のWebプロデューサーを務めた後、独立。オウンドメディアの新規立ち上げ/運用請負、ライティング/編集、コンテンツマーケティング支援などを生業にしております。>>企業サイト
自動運転、一番身近なのはバスかも? 埼玉県深谷市でも運行開始: SPSインサイト
2025年04月09日
コラム
「SPSインサイト」では、担当記者が企業の報道発表を読み解きながら、コラムをお届けします。読者の皆さんのビジネスに役立つひらめきにつながれば幸いです。
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Googleから分社化したWaymoが、2026年にもアメリカの首都ワシントンD.C.で完全自動運転のタクシーを走らせる――。つい先日、そんなニュースが流れてきました。Waymoは日本でもタクシーアプリ「GO」やタクシー会社の日本交通と提携して、2025年中に自動運転タクシーをテストする計画を発表しています。
こうした自動運転に関するニュースを見ると、“主語”が海外企業のものが目立ちます。「日本は自動運転でも海外勢に後れを取るのか」と嘆く方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば、自動運転専用道が設けられるToyota Woven City(静岡県裾野市)はPhase1の建築を完了。2025年秋以降に実証実験を開始する見通しです。
また、名古屋大学発のスタートアップで自動運転技術を手掛けるティアフォーなどは2025年3月、石川県小松市の一般道における自動運転車(レベル4)の認可を取得しました。日本でも少しずつではありますが、自動運転のある生活が身近に迫りつつあるようです。
レベル4認可を取得した自動運転バス「Minibus」(ティアフォー製)(出所:損害保険ジャパン株式会社)
埼玉県初の自動運転バス、4月から深谷市で走ります!
先ほど、「石川県小松市でティアフォーらが自動運転車の認可を得た」とご紹介しました。同社は埼玉工業大学などとも連携し、埼玉県深谷市において「深谷自動運転実装コンソーシアム」を結成。深谷市に自動運転バスを導入するべく、自動運転レベル2で走行する自動運転バス試乗会を開催するといった実績を積み重ねてきました。
そしてこの4月から、深谷市コミュニティバス「くるリン」の定時定路線「北部シャトル便+周遊便」で自動運転バスが運行を始めることになります。自動運転が導入されるのは、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公となった渋沢栄一氏の生誕地や記念館などをまわる「周遊便」コース。約37kmの道のりを1日2便走らせることになるそうです。
「くるリン」の新車両。深谷出身の渋沢栄一氏の似顔絵が描かれています。(出所:埼玉工業大学)
深谷市に自動運転バスが導入されると、コミュニティバスとして埼玉県内では初の試みとなります。運行開始に先駆けて、開発中の大型自動運転バスを披露する報道関係者向けの説明会が開催されました。
このプロジェクトでは、埼玉工業大学 副学長で自動運転技術開発センターのセンター長である渡部大志教授が開発責任者を務めています。「徐々に自動運転の期間や区間を増やす計画で動いています」「いつまでも(自動運転)レベル2ということではなくて、レベル4を目指すようにやっていく」「運転席に人がいない状態であっても安全安心に運転できるよう、さまざまな安全装置を付けて、国の特定自動運行にかかわる許可も目指していくというスタンスで開発しています」と構想を語ってくださいました。
深谷市として、自動運転レベル4相当となる特定自動運行を申請したのは、深谷市の北部、利根川の傍を通る「県道356号 成塚中瀬線」です。その地中に、運行車両を検知するための磁気マーカーを埋めています。
深谷市と言えば、「深谷ねぎ」の産地として有名ですよね。そこには「ねぎ畑以外、何もないんですよね……」と渡部先生。特定自動運行の許可を長引かせないよう、なるべく交通量が少ない環境から着手しようとそこに決めたということでした。
のんびりとしたねぎ畑が広がる一帯を、ハイテクな自動運転バスが走り抜けるさまは、なんとも不思議な感じですね。
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